受験が自分ごとになっていない子も自分から机に向かうようになる、「未来合格体験記」とは? ノウハウと家で書く方法を聞いた――。

※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。

勉強する子供
写真=iStock.com/Hakase_
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教える人

中学受験カウンセラー
野田英夫さん

MIRAINO教育グループ代表。早稲田アカデミーで、在職中はトップ講師として5000人以上の生徒たちを難関校合格に導く。2020年、大学付属校受験専門塾「早慶ゼロワン」を開校。22年、大学受験のいらない医学部受験専門塾「Dr.Aiss」を開校。現在は計13教室を展開。

それは、ビジョンがないから

僕は仕事柄、昔から多くの保護者から、子供のやる気がないという相談を受けてきました。

小学5年生、6年生と中学受験が迫ってきても、相変わらずふわふわとした様子で家でもだらだらと過ごし、受験生としての自覚がないように見える、親が言わないと宿題もやらない。例えば、そんな男の子。コツコツ頑張っているようなのに成績が伸びない、受験が近づくにつれて不安がるようになってきた。そんな女の子もいるでしょう。

これらは、子供がなんとなく勉強をしているから起きることです。「未来合格体験記」を書くことで、すべて解決します。

「未来合格体験記」とは?

では、「未来合格体験記」とは何か?

これは、受験の前に合格した未来の自分を想像して書く合格体験記のことです。この体験記をしっかり書けた受験生の多くが第1志望校に合格しています。

受験の前に書くので、もちろんまだ本人は合格していません。

合格した自分を想像することで「なりたい」自分が見えてきます。子供自身が、なりたい自分と今の自分とを比べたときに、今の自分に足りないものがわかり、「なりたい自分」を目指すモチベーションが働き、志望校合格に近づいていけるというわけです。

まずは「目的」をしっかりと定める

さて、「未来合格体験記」を書くために大切なのは、「目的」をしっかり定めることです。

多くの家庭が、○○中学合格!などと「目標」設定はするんですね。でも、その先の、例えば「学園祭で見た△△先輩みたいになりたい」「○○中学での学びを生かして、▲▲大学に入り建築士になりたい」など、“何のためにその学校を目指すのか”という「目的」こそが子供の駆動力になるのです。目的設定をしていないと、子供は「○○中学に合格することになんの意味があるんだろう」と思ってしまい、やる気が継続しません。

実際は、中学受験の志望校選びは親がリードすることも少なくないでしょう。その場合は、親が、子供がそこに入学したあとの様子や将来をイメージできるようなワクワクする話をしてやりましょう。「中学に入ったら、あの広いグラウンドで思いっきりサッカーができるね」「お父さんは、昔病気をしたときにお世話になったお医者さんが忘れられなくて、医師になったんだよ。本当に感謝していて、退院していく子供の顔を見ると、疲れがすべて吹き飛ぶよ。○○は今、どんな仕事に興味があるのかな?」などと、自分の経験を話したりして、子供の想像力をかき立て、一緒に目的を設定していくのもいいでしょう。

子供にもよりますが、「未来合格体験記」を書くのは小学4年生にはまだ難しいかもしれません(早くやればいいというものでもない)。ベストなのは5年生の夏頃から遅くとも6年生のゴールデンウイークまで。ぜひ一度書いてみてください。

とはいえ、「では今から『未来合格体験記』を書いてください」と紙を渡しても、すらすらと書ける子はまずいません。そこで今回は、当塾で「未来合格体験記」を書くにあたって使用している「事前準備ノート」を紹介します。

まずはそれに具体的に回答するなかで、合格した自分の姿を子供にイメージさせていきましょう。また「未来合格体験記」は、一度書いてから何度修正してもOK。考えて修正する時間を子供に与えることで、「自分ごと化」していくことでしょう。