「上司が評価してくれない」「やりがいが見出せない」「気持ちが安らがない」……。2500年前の教えをもとに気鋭の僧侶が古くて新しい悩みに答える。
いまからおよそ2500年前に生きたブッダ。その言葉に耳を澄ませますことは、現代に生きる私たちにおいても大いに意義あることと思われます。ブッダの教えは宗教というよりも、自分の心を見つめ、操縦するための心理学であり、実践的な心のトレーニング・メソッドです。
それは盲信や崇拝を排し、クールですこぶる合理的かつリアリスティックな視点に立つもの。ゆえに時代や民族、宗教をも超えた普遍性を持ち、誰もが役立てることができる教えなのです。
さらにブッダの生い立ちに目を向けてみますと、シャカ族の王子として生まれ、豊かな環境で育ったブッダは、いろいろな意味で恵まれていたのにもかかわらず、幸せではありませんでした。心に苦しみを抱き、それを乗り越える道を探求すべく、出家修行生活を始めたのです。
この「恵まれていても幸せではない」という状況は、現代に通じるものではないでしょうか。豊かだからこそ感じる「苦」のために悩み、さまざまにもがいた末、「目覚めた人(ブッダ)」となった彼の言葉は、それゆえに私たちの心に有効なのだとも申せましょう。
大事にされたければ他者を尊重する
●頑張っているのに、上司が正当に評価してくれない。
●自分は職場で必要とされていないと感じる。
●部下が素直に言うことを聞かず、自分が軽視されているように感じる。
自分の頑張りが上司に認められないという不満も、職場で必要とされることや部下に従順さを求めるのも、すべて根っこは同じ。「自分の評価を上げたくてたまらない」という「欲望」から派生する悩みだと考えられます。
欲望は、仏道における根本煩悩の1つであり、煩悩とは文字通り、私たちを「煩わせ」「悩ませる」心の衝動です。煩悩は私たちの心身にダメージを与える毒素のようなもので、ストレスの素ともいえるでしょう。しかしながら、人は皆「かけがえのない、この自分」という自意識を持ち、「そんな自分のかけがえのなさを見出したくてたまらない」という強い欲望の煩悩を抱いているものです。