「上司が評価してくれない」「やりがいが見出せない」「気持ちが安らがない」……。2500年前の教えをもとに気鋭の僧侶が古くて新しい悩みに答える。

求めるのではなく自分から好意を差し出す

●帰宅しても、誰もいたわりの言葉をかけてくれないのが不満。
●これといった趣味もなく、何をしていても楽しいと思えない。
●パートナーはいるが、一緒にいても気持ちが盛り上がらない。

いたわりの言葉をかけてくれる家族や気持ちを盛り上げてくれるパートナー、自分を楽しませてくれる趣味。そうしたものを求めて満たされない思いを抱くのは、心が不安定な状態にあるからだと申せます。その背景には、仕事への依存が指摘できるかもしれません。

人は、社会における自分の価値を見出そうとして、仕事に依存しがちです。男性はとくにその傾向が強く、生活の中で仕事に比重をかけすぎることで、家族やパートナーとのつながりが弱くなったり、プライベートを充実させる趣味が持てなかったりしてしまいます。

心の安定性について考えるにあたって、まず私たちの立ち位置を支え、心の拠りどころになってくれるものを挙げてみましょう。主なものとしては、仕事(職場)のほか、地域ネットワーク、家族、パートナー、趣味などがあります。このうち地域ネットワークは都会、とくに東京では壊滅状態にあり、友達がその代わりになっているようです。

自分の心を安定させるには、これらの拠りどころにバランスよく比重をかけることが重要です。1つのものに偏って依存してしまうと、そのほかのものとのつながりが保ちにくくなり、また依存した対象との関係も悪くなってしまいます。依存といういびつな関係は、そこから嫉妬や不安を生み出して、結局は自分を苦しめることになります。

しかしながら、人は放っておくとつい何かに依存してしまう生き物です。そうならないよう、まずは比重を分散させること、バランスをとることを意識するようにいたしましょう。