「上司が評価してくれない」「やりがいが見出せない」「気持ちが安らがない」……。2500年前の教えをもとに気鋭の僧侶が古くて新しい悩みに答える。
成功のイメージにとらわれすぎていないか
●英語や資格の勉強を始めても、三日坊主になってしまう。
●おもしろいと思った仕事もすぐ飽きて意欲がなくなる。
●本や雑誌に感銘を受けても気持ちが持続せず、尻すぼみになる。
最初は意気込んでやろうとしたことが続かないのは、「早く成果が出てほしい」と欲するから、つまり欲望が強すぎるからだと思われます。
人は成果を求めて何かを始めるわけですが、語学や資格の勉強にしろ仕事にしろ、本に書かれたことを実践するにしろ、すぐに成果が得られるものではありません。まだ得られていないものを「早く早く」と欲するのは苦しいため、かえって嫌になってしまうのです。
これは近年人気の山登りの過程に似ているといえるでしょう。登っている最中は息が切れたり脚が痛んだり、つらくて音を上げそうにもなるものです。そんなとき、ああ早く山頂に着きたい、頂上はさぞすばらしいだろう、早く着いて楽になりたいなどと思えば思うほど、疲れて歩けなくなってしまいます。
こうしたメカニズムは、欲望と深いつながりを持つドーパミンにも関係があると考えられます。快感物質のドーパミンは欲望が満たされたとき、つまり望んでいた成果が得られたり、目標を達成したりしたときに、脳内で大量に放出されて快感を生じます。また、目標などを設定した時点でも分泌されて、少し気持ちよくなる。何かをやると決めたときの高揚感などがそれです。
しかし目標に向かっている途中に快感は得られず、「早くああなりたい、けれどもまだできていない。早く早く」と、欲望によって鞭打たれているような気分になります。そのためにつらくなって投げ出したくなってしまうのです。