日銀総裁の名前を冠した「黒田サプライズ」なる大型金融緩和の余韻も冷めやらず、株価は急騰し、円は急落、そして賃金や企業収益についても明るい話題がちらほら見えてきた今日、こんな表題の1冊を取り上げていては、時流に乗り損ねると揶揄されても文句は言えないかもしれない。
だが、仮にアベノミクスやらサプライズやらでデフレが解消に向かっているとしても、本書は十分に一読、いや二読、三読にも値する。東京大学大学院経済学研究科教授である著者は、遠くは『高度成長』、近くは『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』などの好著からも知れるように、理論的な思考力に加えて、歴史的な感受性も豊かな優れた書き手なのだ。
本書では、まず第1章で争点を明確にしたうえで、第2章ではいわゆる失われた20年について、政府の報告書や新聞記事、コラムを多数引用して、読者の記憶を(若い読者にとっては基礎知識を)補充してくれる。次の第3章では、1873年から1896年までの長期デフレ(ケインズも含む第二次大戦前の経済学者たちにとっての「大不況」はこちらだった)の分析を行っているが、こうして大昔の話が上手に紹介されるあたりは著者の面目躍如と言えよう。
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