日銀総裁の名前を冠した「黒田サプライズ」なる大型金融緩和の余韻も冷めやらず、株価は急騰し、円は急落、そして賃金や企業収益についても明るい話題がちらほら見えてきた今日、こんな表題の1冊を取り上げていては、時流に乗り損ねると揶揄されても文句は言えないかもしれない。

だが、仮にアベノミクスやらサプライズやらでデフレが解消に向かっているとしても、本書は十分に一読、いや二読、三読にも値する。東京大学大学院経済学研究科教授である著者は、遠くは『高度成長』、近くは『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』などの好著からも知れるように、理論的な思考力に加えて、歴史的な感受性も豊かな優れた書き手なのだ。

【関連記事】
円安の恩恵受けるのは、超富裕層と一部大企業
今の20代はなぜお金がなくても幸せなのか
アベノミクスで浮かぶ業界、沈む業界
“政府介入”だけでない流通大手「賃上げ」の理由
不景気でも注文が殺到する「新マーケット」