老人に添い寝すればいいと思ったら、精力絶倫だと嘆く妾

図版8は、口入屋でとんだ旦那を引き当てた女の嘆きである。

年が年だけに、ほとんど添い寝をするだけで、楽ができると高をくくっていた。ところが、老人は精力絶倫だった。毎晩、しかも複数回、求める。

女はぼやく――

「年寄のくせに豪儀に達者だよ。毎晩毎晩、こんなにされては、どうも続かねえ。そのくせに、ただでもすることが曲取りだのなんのと、色々様々な真似をされるのには困るぞ」

――と、旦那は変わった体位や、変態行為も要求していた。

曲取りは、正常位以外の体位で、変態の意味合いもある。

ともあれ、口入屋で旦那を決める囲い者は、『江戸繁昌記』のランク付けでは「中」と「下」にあたるであろう。

老人の囲い者になった若い娘
図版8:老人の囲い者になった若い娘[歌川国虎『祝言色女男思』(部分)1825年(文政8)、国際日本文化研究センター蔵]

日替わりで5人の男をローテーションした「安囲い」の女

なお、『江戸繁昌記』によると、「下」のなかには、ひとりで5人の旦那を持つ囲い者もいたという。

これは、男が共同でひとりの女を囲う方式で、「安囲やすがこい」と言った。

その仕組みは、5人の男がそれぞれ「一の日(一日、十一日、二十一日)」、「三の日」、「五の日」、「七の日」、「九の日」という具合に、日を決めて均等に女の元に通うというもの。

これだと、男は女を独占こそできないが、1カ月に3回、旦那気分を味わいつつ、負担は普通の場合の5分の1ですむ。

いっぽう、女の側からすれば、たとえば五の日の男が終了して欠員ができた場合、口入屋に行き、

「五の日に空きができたのですがね」と、募集をすればよい。

ところで、戯作『好色一代女』(井原西鶴著、貞享3年)に、妾を抱えたい男が、希望を述べる場面があり──――

永井義男『江戸の性愛業』(作品社)
永井義男『江戸の性愛業』(作品社)

「まず歳は十五より十八まで、当世顔は少し丸く……(中略)……足は八文三分に定め、親指って裏すきて……」

――と、注文は細かい。

注目すべきは足の注文である。八文三分は足袋たびの寸法。

足の親指が反るのは、陰部が名器である証拠と考えられていた。足の裏がすいているは、偏平足ではないという意味。

まさに、商取引で品質に注文を付けるのと同じだった。

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