「不都合になるぎりぎりまで権限を分散せよ」

新しいアプローチは従来の戦闘組織をガラリと変えた。指揮権をトップに集中するのではなく、現場の意思決定者にどんどん情報を与え、自主性を持たせた。「不都合になる寸前のぎりぎりのところまで権限を分散せよ」が、組織の多くで合言葉になり、迅速で的を絞った行動をとるための条件が整えられた。

共通の目的によって意欲をかき立てられ、共通の意識によって結びつけられて、ネットワークはより緊密かつ多様、知的になった。結果、戦争の混乱状態の中にあっても前例のないスピードや柔軟性、有効性を発揮した。大きくなることは動きが遅くなることを意味しなくなり、ネットワークは予測不可能を意味するものではなくなったのだ。

国防総省がクジラから都市に変身できたのなら、大企業にも可能なはずだ。ほとんどの企業は20世紀初めにつくられたリーダーシップ・モデルや組織モデルを採用している。当時は、目標は規模であってスピードではなく、課題は調整であって複雑性ではなかった。われわれは当時とは異なる時代に生きており、「より大きく」と「より速く」の両立を可能にする新しいモデルが必要になっている。将軍より市長に近いリーダー、命令を出すのではなく関係を築くリーダーが必要なのだ。軍の将軍が変身できたのなら、ビジネスリーダーにもきっと同じことができるはずだ。

(ディプロマット=翻訳 Getty Images=写真)
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