北朝鮮兵を侮れない理由の2つ目に、戦術面での著しい進歩が挙げられる。戦線への投入直後、大規模な集団で行動していた北朝鮮軍は、ウクライナ軍のドローン攻撃で大きな損害を受けた。しかし、それを教訓として素早く戦術を変更。ワシントン・ポスト紙は、今では高度な戦闘準備態勢と卓越した射撃技術を持つ精鋭部隊へと変貌を遂げたと評価している。
進化する北朝鮮軍を侮れない
北朝鮮軍の急速な進化は、緻密な分析に基づいていた。ウクライナ軍が押収した作戦文書には「現代戦ではリアルタイムの偵察とドローン攻撃が常用手段となっている。大きな損失を避けるためには、戦闘チームを2~3人の小規模ユニットに分散させることが不可欠だ」との記述が残されていた。
最後に、戦闘意欲が低いと言われるロシア軍に対し、「将軍様」への忠誠を誓う北朝鮮兵の熱量は高い。米シンクタンクの大西洋評議会によると、実戦で北朝鮮軍と対峙したウクライナ軍将兵たちは、その戦闘能力の高さに舌を巻いているという。
ウクライナ軍のヤロスラフ・チェプルニー報道官中佐は、米政治専門メディア「ポリティコ」の取材でこう評価している。「彼らは若く、意欲的で、体力に溢れ、何より勇敢です。小火器の扱いに長け、規律も徹底している。歩兵に求められる資質を、余すところなく備えているのです」
ロシア支援は名ばかりの口実…同床異夢の北朝鮮
もっとも、ウクライナで共闘する北朝鮮とロシアは、同床異夢の状態だ。大西洋評議会の分析によれば、北朝鮮はウクライナへの戦争参加について、表向きはロシア支援という大義名分を掲げつつも、その実は自国の軍事力を飛躍的に強化する絶好の機会と捉えられている可能性が高い。
背景には、北朝鮮軍の深刻な課題がある。130万人という世界最大級の現役兵力を誇る北朝鮮軍だが、実戦経験の不足が致命的な弱点とされてきた。そのため、ウクライナでの実戦は、戦術の近代化を進める機会となっているのだ。
太平洋評議会は、軍事支援の見返りとして北朝鮮が、二重の利益を享受していると分析する。一つは破格の報酬だ。韓国の情報機関が明らかにしたところによると、ロシアは北朝鮮の兵士1人あたり月額2000ドル(約31万円)という、北朝鮮の水準からすれば破格の給与を支払っているという。その大半は金正恩政権に搾取されているとみられている。