アンテナを張るべき「部下のひとこと」
メンバーとの対話において、リーダーが果たす役割は「メンバーの本音を引き出す」ことです。ここでも「引き出す」という言葉が先行すると、リーダーが何か特別なことをしなければいけないのかと、身構えてしまうかもしれません。ご安心ください。その真逆のことが起きるのが、本来の対話の姿です。
1on1や会議、ミーティングの場で、メンバーとの対話がうまくいっていると感じる瞬間があります。それは、メンバーから「実は……」という言葉が出たときです。メンバーの自発的な発言でもある「実は……」は、「本音を話します」のサインです。このサインを見逃さないようにしましょう。
これまでのメンバーとの対話を思い出してください。メンバーに何を聞いても「ええ、まあ」「はあ、そうですね」といった返事か、「わかりました」と指示伝達の復唱しか返って来ないことがあったかもしれません。それ以上、互いに何も話すことなく、気づけばリーダーの独演会となっていたこともあったでしょう。
本音を話してくれた部下に感謝を伝える
けれども、対話を通じて信頼関係が深まると、メンバーから「実は……」と話し出し、リーダーはあれこれ考えることが少なくて済みます。一緒に散歩をしているかのような気楽さこそ、本来の対話が成功している状態です。
「実は……」の続きはさまざまです。顧客との商談の感想、仕事上の困りごと、新たなステップアップの相談、今後の展望など、メンバーの「自分の仕事に関する話を聞いてもらいたい」があふれ出します。リーダーから見れば、組織をマネジメントするうえで貴重な情報を次々に聞くことができる状況です。心から「聞かせてくれてありがとう」と言いたくなる気持ちでいっぱいになります。
そんなときは、その気持ちを心にしまわず、「そういうふうに考えていたんだね。聞かせてくれてありがとう」と、声に出してメンバーに伝えてください。メンバーも「こちらこそ、話を聞いていただき、ありがとうございます」と思うはずです。ここにはリーダーとメンバーの信頼関係があります。
お互いの新しい発見や理解の深まりは、信頼関係をさらに強くさせます。そして、対話→連携のフェーズを経て、共創のゴールへとたどり着けるのです。