「親のXデー」がやってきた時、子供はどうすればいいのか。83歳の母親に要介護の症状が出てきたアラフィフのマンガ家・月野まるさんは、きょうだいとタッグを組んで対処。施設に入所する段階での様子を聞いた介護・暮らしジャーナリスト太田差惠子さんはどのように“ジャッジ”したのか――。

※本稿は、月野まる『ままならないアラフィフたち 介護はじまりました』(主婦の友社、監修:太田差惠子)の一部を再編集したものです。

「介護は親が払える範囲で」と割り切るのは意外に難しい

親孝行とお金は切り離そう

【太田差惠子(以下、太田)】月野さんたちがスムーズに施設入居に移れたのは、お母さまの資産や年金の額を、お子さん全員で情報共有できていたからだと思うんです。そしてきょうだいでそれらの管理をされていましたよね。(月野さんの母親の施設入居を巡るドタバタはP3からのマンガを参照ください)

【月野まる(以下、月野)】わが家の場合、かなり前に母の資産を確認できていたんです。お金についても「親のお金は親のもの」という共通認識がありましたし、私たちに親の介護費用を出せる余裕がない(笑)。でも、費用を子どもが負担する気持ちも少しわかるんです。「自分で介護せずに施設に入れるんだから、せめてお金くらいサポートしたい」と思っちゃうんですよね。

【太田】そうですね、でも、親が100歳まで生きれば子どもだって70代、要介護になっているかもしれません。自分のお金は自分の介護のために残しておかないと、困るのは自分とその子どもです。

【月野】確かに! 親孝行とお金は切り離すべきなのですね。でも介護にはいったいいくらかかるんでしょう(※1)。そこがイマイチわからなくて迷います。

※1 介護にかかる平均額(月)在宅介護……平均4.8万円/施設介護……平均12.2万円 施設介護には食事代や住居費も含まれるので価格が高くなる。生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021年度より

月野まる『ままならないアラフィフたち 介護はじまりました』(主婦の友社、監修:太田差惠子)
月野まる『ままならないアラフィフたち 介護はじまりました』(主婦の友社、監修:太田差惠子)

【太田】「いくらかかるか」ではなく「いくらかけられるか」が大事なんですよ。寿命が延びているので、女性の場合は105歳、男性でも100歳まで生きると考えて計算することをおすすめしています。

【月野】なんと! 105歳まで生きると考えてシミュレーションしなくちゃいけないんですね。私の母は内臓がめちゃくちゃ元気なので、105歳までいけるかもしれません。

【太田】それはすばらしいですね。例えば、いま80歳の女性なら105歳まであと25年。お手持ちの資産を25で割り、そこに1年間の年金額を足せば、1年間に使える金額をざっくり見積もることができます。