受験の本番直前に、親が子供にしてはいけない行動とは何か。30年以上塾講師を務める、教育コンサルタントの渋田隆之さんは「受験生の子供は、親の言葉や行動に影響を受けやすい。中には親子関係が崩れかけたり、子供が受験どころではなくなってしまったりした事例もあった」という――。

(※個人の特定を避けるため、記事中で紹介する事例は一部を変えています)

勉強中の中学生の手元
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

受験が終わっても親子関係は続く

塾講師として30年以上、教壇に立ち続けてきました。送り出した生徒・保護者の数は2万人以上となります。よく言われる話ではありますが、受験というのはそれが中学受験、高校受験、大学受験にかかわらず、ゴールでありつつも新しい生活へのスタートでもあります。

受験生と受験生の親という関係は合格発表が終わればいったんは終了しますが、親子である関係はそれからもずっと続くことを忘れてはなりません。たとえ、第一志望に子どもが合格しても、家族の間柄が壊れてしまうようでは、その受験は成功とは言えないと思います。

私が過去に見たり相談を受けたりしたケースの中には、受験本番直前の親のささいな行動や言動によってお子さんが受験どころではなくなってしまったり、親子関係が崩れかけたりしたケースもあります。

受験生を持つ親のみなさんに“同じ轍を踏まないでいただきたい”という思いから、この受験というドラマの最終章がハッピーエンドで終わり、あらたな生活がさわやかに始められるように、3つの事例をご紹介していきたいと思います。

受験直前に“横やり”を入れるのは危ない

まずは、受験直前期になって父親が子供のことを思うあまり、口を出しすぎて家庭が混乱してしまったケースです。

1.中学受験生・実くん(仮名)のケース

実くんは、受験直前まで母親と受験対策をやってきたのですが、入試直前に突然、父親が協力を買って出てきました。しかし、父親の言動に問題がありました。

「こんな学校に行く意味はあるのか。公立にすすめばいいじゃないか」と母親と実くんで考えていた併願作戦の組み立てを全否定したり、「算数を教えてみたら、基本が全然詰まってない。今まで何を見ていたんだ」と母親や実くんの今までの頑張りに対して厳しい言葉を投げかけたりしたそうです。

母親からしてみれば、塾の送り迎えやお弁当を作ったり、健康管理をしたりと大変な毎日を過ごしてきたのに、「今まで何もしてくれなかったのに、今さら何を言い出すの」と不満を抱かざるを得ない状況でした。

さらに実くんのほうは、ただでさえ受験直前の合格・不合格のプレッシャーで大変な時期に家庭環境がぎくしゃくしてしまい、勉強に身が入らない状況が生まれてしまいました。

急な父親の協力の申し出は「ここまで頑張ってきた息子を自分もなんとかしたい」という愛情から出てきているのですが、このケースは、いったん落ち着いて受け止め、解決の糸口を見いだしたほうが良いでしょう。