受験生への「たられば」は禁句
「私は、勝負の前には、『たられば』は禁句だと思います。野球の件だけでなく、○○塾に行っていれば、○○特訓を受講していたら、など考え始めたらキリがありません。受験がうまくいかなかったときには○○高校を選んでいたらというふうになるかも知れません。
たとえ志望校に合格したとしても3年間のすべてが順風満帆ということはありません。その時にも、△△高校を選んでいたらという「たられば」思考が出てきたら、一生幸せにはなれないんじゃないでしょうか?」
拓哉くんが直々に、しかも久々に私に会いにきたということは、「合格したいから、背中を押してください」という気持ちからだということは、当初から伝わっていました。だからこそ私からは短い応援の言葉で「信じているからな。応援してるぞ」とだけ伝え、相談を終えました。
これまで頑張ってきた子供に対して、「~していたら」「~していれば」という言葉は、これから頑張ろうとする子供にとって「応援」とは捉えられません。ささいな言動ですが、大人が思う以上に子どもを傷つけてしまうこともあります。
入試の直前ほど“前向きな言葉”を
今回のケースでお母様にまったく否はありませんが、子供なりに苦労しながらやりぬいたことに関しては、賞賛以外の言葉の選択肢は無くて良いと思います。
人生の選択には正解がありません。結局は、その過去の選択を正解だと言えるように、いま前を向くことが大切であると思います。
特に小学生や中学生は親に褒められたい、認められたいという気持ちで頑張っているものです。何かをやり抜いた生徒は勝負強いものです。拓哉くんには、野球経験で培った根性と体力がありましたので、その後、見事に合格を勝ち取りました。
受験生を持つ親の皆さんの中には、つい過去を振り返り、「たら」「れば」と口にしてしまうこともあるかもしれませんが、全く悪意がなくとも、それは子供にとって気にしたり傷ついたりする内容かもしれません。特に受験直前期は、普段より不安やプレッシャーが強まっていることもあります。親が発する言葉を子供が聞いたらどう感じるのかという視点を持って、むしろ「大丈夫!」とか「頑張ってきた自慢の子だよ!」などと前向きな気持ちにしてあげられる声かけが大事です。