「家族間の揉めごと」は塾に相談するといい
実は、「親同士のボタンの掛け違い」で家族間がぎくしゃくするという、これと同じようなケースは少なくありません。ただし、家庭内だけで解決するのは難しかったり、時間がかかったりします。塾や家庭教師(とくにベテラン)は、このような事例をたくさん経験していますので、遠慮なく、そして速やかに相談をして家族内の空気を変えてもらうと良いでしょう。
家族全員の目標が「お子さんの合格」であることは間違いありませんので、「ボタンの掛け違い」はスムーズに解決することが多いものです。
中学受験を最後まで完走するのは、それだけでも大変なことです。家族それぞれの立場での頑張りがあったからこその受験直前期を迎えられていたはずです。それにもかかわらず、お互いに言いたいことも言えずに、誰かが我慢すればいい……という状況が続くのは、あまり良いことではありません。まったく不満もないという人間関係というのは存在しないと私は思います。家族だからこそぶつかることもあるのが自然です。
だからこそボタンの掛け違いがわかったら、しっかり話し合いをして、お互いの考え方を共有する機会をつくれさえすれば、かえって家族間の絆が深まり「雨降って地固まる」ことにもつながります。
その後、実くんのご家族は私との間で四者面談を行い、無事に事なきを得ました。後日、お母様からは、「父親は会社が大変な時期でした。しかし、仕事の愚痴を一切家庭には持ち込まずにいてくれたことを思い出しました。今回、先生との四者面談の機会をつくってもらって、家族が一致団結したように思います。ありがとうございました」という言葉をいただきました。
ボタンの掛け違いで一時は危うく中学受験どころではないという状況になりかけましたが、しっかり話し合い、家族の絆を再確認したことによって、合格への扉が開いたケースでした。
親が語る「思い出話」にも危険がある
次は、つい親が言ってしまいがちな言動についてです。
2.高校受験生・拓哉くん(仮名)のケース
中学生の拓哉くんは、小学校時代に中学受験塾に入って受験と野球の両立を目指していましたが、ピッチャーとしての才能が開花。6年生にしてリトルリーグのチームのエースとして活躍していたため、高校受験からの挑戦を選びました。
しかし、中学時代も野球にどっぷりの生活をしていたために、なかなか勉強はできていない状況でした。野球を引退してからも、「これから頑張る」と口では言うものの、受験直前になってもなかなか身が入らず、ご家族で、ご縁のあった私の元にご相談に来られました。志望校は私立の進学校ではありますが、野球も強い伝統校でした。
3年ぶりに会った拓哉くんは、体格も大きくなりさらに逞しくなっていました。話を聞くと中学時代はピッチャーではレギュラーを取れず、外野手として最後まで頑張ったということです。相談が始まると、冒頭に母親から、「あのまま中学受験をしてい“たら”……」という話が出てきました。母親は私との「思い出話」のつもりで深い意味は無かったのかもと思いますが、私は拓哉くんの顔が曇ったのに気づきました。そして、母親にはこのような助言をしました。