「親の心配性」は「子供のメンタル」に悪影響

最後は、親のメンタルが子供に影響を及ぼす事例についてです。

3.中学受験生・葵さん(仮名)のケース

こちらは、中学受験生の葵さんのお母様から、本命の学校を受ける前に受験する「前受け受験」の頃に届いた、相談のメールです。

「うちの子は、メンタルが弱くて本番に力を出せるのかが心配です。初日に不合格になったら立て直しが利かなくなるのではないかと思い始めました。また、最近は不安で夜も眠れていないようです。このままで大丈夫でしょうか? 中学受験には向いていなかったのでは……」

カフェでスマホを使用している女性
写真=iStock.com/PK24
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私は保護者向けの講演会を行っていますが、そこでは、「子供さんの性格は、周りの大人の影響を大きく受けます。保護者が心配性の場合、子供もそうなりがちなのです。私は20以上の教室を管理する仕事もしていましたが、生徒は教室長の性格にも似ていくことが多いと、長年の経験で感じています」という話をします。

葵さんのお母様のメールの文面を見ると、主語を「うちの子」ではなく「母親である私は」もしくは「母親である私も」に置き換えても読めます。お母様の心配性が葵さんのメンタル面に良くない影響を及ぼしている可能性がありました。

中学受験では、前受け受験をして成功体験を積んでもらうという取り組みをされるご家庭もあります。「うちの子はメンタルが弱いので、一度成功体験を持たせて自信をもって本番に向かわせる」というねらいです。

「子供がせっかくつけた自信」を親が壊してしまう

私は、前受け受験については否定も賛成もしない立場ではありますが、「うちの子はメンタルが弱いので」という前提が気になりました。

仮に、本命ではない学校に合格したことで子供が自信を持てたとしても、親が「でも点数は良くなかったし」「特待合格ではなかったよね」と言ってしまったり、ひいては「前受けと本番は違うから」というマイナス思考の考え方が消えていない限りは、その合格で自信をつけた意味が薄くなるのではないかと思います。

入試直前は、親の不安をいかに子供に伝えないように意識できるかがとても大切です。できるだけポジティブな感情を持って、子供を信じてあげることも受験生を持つ親の重要な役目です。そうは言っても、子供と一緒に取り組んできたという経緯や、SNS上などで親の不安をあおるような玉石混交な情報もあふれていることから、「では、どうすれば親の不安はなくなりますか?」という疑問を抱かれるでしょう。最後にいくつかのヒントをお伝えしたいと思います。