兄の死

父親が46歳で亡くなった後、母親はゴルフ場でキャディーとして働き始め、65歳の定年まで勤め上げた。

増田さんが結婚して実家を出た後、兄も弟も大学を出て就職し、弟は結婚して、増田さんの家から車で20分ほどのところで暮らしていた。

ゴルフ場でクラブ一式の入ったバッグに焦点
写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
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ところが2012年秋のこと。突然兄から電話がかかってきた。

「自分はだるくて動けないし、母は足の裏にまで帯状疱疹ができて痛みで動けないから、家のことを少しやってくれないか?」

兄は体調を崩して休職し、1年ほど前から実家に身を寄せていた。

当時ペーパードライバーだった増田さんは、滅多にない兄からの連絡に戦々恐々とし、電車やバスを乗り継いで実家へ急いだ。

しかし思いのほか、実家は荒れていなかった。

増田さんは数日分の食事の作り置きをして、帰宅。その後は週に1回は顔を出すようにした。そして翌年の1月、実家に行くと、兄から「脾臓に疾患がある。慢性疲労症候群もあり、脳髄液減少症かもしれないとも言われている」との話があった。

「兄は、強い倦怠感や頭痛に悩まされていたようです。なかなか病名が定まらず、検査入院を繰り返し、体質改善する合宿のようなものにも参加していました」

それから2年後。実家で具合が悪くなった兄は、増田さんに連絡したがパート中でつながらず、弟に連絡。駆けつけた弟に病院へ連れて行ってもらったが、その日の深夜に息を引き取った。47歳だった。

「最後まで病名が定まらなかったのは父とよく似ていました。兄の死亡診断書には、心不全と書かれていました」