他の国内ブランド企業でも起こり得る
業績不振の要因には、ライフスタイルの変化とユニクロなどの台頭、ECサイトの立ち遅れ、広がり過ぎたブランドと子会社に加え、中国・米国など海外事業の不振、重荷となる人員と店舗などが挙げられる。
こうした要因の多くは、ワコールに特有のものではなく、多くの日本の企業にも共通する悩みのはずだ。例えば、ブランドの乱立は、資生堂でもみられた(「『中国市場に頼りすぎていた』資生堂1500人早期退職募集で見えた“名門ブランド企業”3つの低迷理由 なぜ“優良ブランド”を抱えるのに活かせないのか」プレジデントオンライン)。
なぜこんなにブランドがごちゃごちゃとできてしまうのか。余程のことがない限り、雇用維持や生産設備維持を前提とした経営のため、組織が肥大化するなかで顧客や市場の変化についていけず、事業構成やブランド数だけが拡大してしまうという、日本企業の体質による側面もあろう。
「物言う株主」であるシンガポールの投資ファンドが筆頭株主となったことで、この先、より一層のリストラや事業整理が求められる可能性があるなか、軽量化・ブランド整理・デジタル化が、ワコールがこの先、復活するには必要なのかもしれない。
もっとも、海外の「物言う株主」に言われるまでもなく、上場する株式会社である以上、株式市場を意識した経営やガバナンスの強化は、ワコールだけでなく、全ての日本企業に課せられた課題といえよう。