大谷翔平選手は何がすごいのか。『自分に嫌われない生き方』(KADOKAWA)を書いた谷口たかひささんは「大谷選手は20代にして“大リーグのルール”を変えた。これからの厳しい時代を生き抜く日本人に、最も求められている姿勢だ」という――。(第2回)
米大リーグ、ロッキーズ戦で54号3ランを放ったドジャース・大谷翔平
写真提供=共同通信社
米大リーグ、ロッキーズ戦で54号3ランを放ったドジャース・大谷翔平。打点は130となった=2024年9月27日、デンバー(共同)

ルールは「守るもの」ではなく「変えるもの」

「Ohtani rule」って知っていますか? 大谷翔平選手が、アメリカの大リーグのルールを変えました。

投手としては途中降板した試合でも、打者として(他のポジションの守備につかない形でも)試合に出続けて良い。

以前はこのルールはなく、大谷翔平選手のためにできたため、アメリカでも「Ohtani rule」と呼ばれているそうです。20代の日本人が、本場アメリカのメジャーリーグのルールを変えたのです。これからの時代に必要なのはこういうことだと思います。

「ルールって、何するもの?」私は環境活動家として、約15カ国で講演をしてきたのですが、日本の学校講演で、この質問をすると、こう返ってきます。「ルールは守るもの」もちろん、それも間違いではないでしょう。

一方で、海外の学校講演ではこうも返ってきました。「ルールは変えるもの」。ドイツでも、ルールは「守るもの」であると同時に、自分が行動して「変えるもの」と教わるそうです。

もちろん、「ルールを破る」というわけではなく、適切な方法で、自分が力をつけ、行動して。スウェーデンの小学校の教科書には、そのために勉強して力をつけることが必要だとすら書いてありました。ルールは「正義」とは限らず、昔の人の都合だからです。

沈黙は「容認」である

南米を始め海外を転々としていますが、デモを見た回数は1回や2回ではないです。「ルールを変えよう」であったり、「給料が低すぎて生活ができないから上げよう」であったり。私はメディアも巻き込みながら、必死に変えるための行動を続けています。

実際に、海外諸国の物価は、私が住んでいた頃に比べて大幅に上がっていますが、それを上回るようなスピードで賃金も上がっているそうです。「このままだと日本人は海外に行けなくなる」と言われていますが、それを肌で実感することもしばしばです。

日本では「ルールなのだから守りなさい」と言って、理由も説明されないまま、守ることだけを強要されることもあります。だけどこれは、一種の思考停止だと思います。そして結局は、黙って従う人が大多数だからおかしなルールでも残り続けます。

陰では不満を言いながら、公には声をあげず、逆に声をあげている人を変な人扱いする。変えられるのも自分。黙って従うことで変えないことに賛同しているのも自分。

「沈黙は容認」です。ルールは「守るもの」ではなく「変えるもの」。これからの日本では、これらをアイコトバにしていく必要があると本気で思っています。