『平時は省エネ 勝負どころは「時の利」を得て挑む』

今やるべきか最大の効果があるか

<strong>JT社長 木村宏<br></strong>1953年、山口県生まれ。<br>76年京都大学法学部卒業、同年日本専売公社(現・日本たばこ産業〈JT〉)入社。<br>99年経営企画部長、同年5月JT インターナショナル社副社長、同年6月JT取締役も兼務。<br>2001年JT取締役を退任し、JTインターナショナル社副社長に専任。05年JT取締役を兼務。<br>06年6月から現職。
JT社長 木村宏
1953年、山口県生まれ。
76年京都大学法学部卒業、同年日本専売公社(現・日本たばこ産業〈JT〉)入社。
99年経営企画部長、同年5月JT インターナショナル社副社長、同年6月JT取締役も兼務。
2001年JT取締役を退任し、JTインターナショナル社副社長に専任。05年JT取締役を兼務。
06年6月から現職。

私は、昔からせっぱ詰まらないと、物事に取りかからない。せっかちだと言われることもあるが、「ずぼら」な面も多分にあると思う。いつも神経を張りつめていたら、いい仕事はできない。リラックスする時間があればこそ、だと思う。

そんな私も、大型の投資案件に関して決定するような「戦闘モード」に入ると、生活がガラリと変わる。睡眠時間は2~3時間に激減する。頭が回転し始めて弾みがつくと止まらないのだ。

1999年に、米たばこ大手RJRナビスコの海外たばこ部門を9400億円で買収する大型案件を決断した。その際も1~2カ月ほどテンションが高い状態が続いた。昨年は英国のたばこ大手ガラハーの買収を決めた。買収総額は2兆2500億円以上と、RJR買収を上回る国内最大級の買収案件である。この案件では、最終交渉を始める頃から2~3カ月にわたり、フル回転の状態だった。

こうした長丁場の緊張状態に耐えられるのは、20代後半から30代初めにかけて“火事場”を経験させてもらったのが大きい。85年の専売公社民営化に向けたプロジェクトに4年弱関わり、丸1年ほどは休みなしだった。お陰で長期にわたり力を発揮し続ける術が身についた。

重大な意思決定は、時の利、地の利がわがほうにあると判断したときに下す。例えばギャンブルに弱い人というのは能力が低いわけではなく、時の利を信じていないのだ。だから、いつも同じ調子でがんばってしまい、裏目に出る。