『作業の3分の2は見せかけ 3時間3つの優先事項に集中せよ』

商社の時間とコンビニの時間

ファミリーマートの社長になって驚いたことは、次から次へと「社長、実は……」と社員がやってくることです。9時15分前に出社すると、社長室の前に社員が列をなしていました。朝の仕事始めは国内6700店の前日の販売データを見ることですが、それが終わりかけると「社長、実は……」と始まります。

<strong>ファミリーマート社長 上田準二</strong><br>1946年、秋田県生まれ。<br>山形大学を卒業後、伊藤忠商事に入社。<br>畜産部長、プリマハム取締役などを経て、2000年に顧問としてファミリーマートへ。<br>02年より現職。
ファミリーマート社長 上田準二
1946年、秋田県生まれ。
山形大学を卒業後、伊藤忠商事に入社。
畜産部長、プリマハム取締役などを経て、2000年に顧問としてファミリーマートへ。
02年より現職。

待たせるのも悪いし、お茶の1杯も飲みたいと8時半に来ても、列ができていました。そこで出社時間を8時15分、8時、7時半と段々早くしましたが、すぐに元の木阿弥になります。ですから今は8時ぐらいに出社しています。

それでも、就任当初は遠慮したのか、「週刊『実は……』」でした。金曜日にまとめて「実は……」ときます。でも、月曜日に言ってもらえれば、週内に問題を解決できるわけなので、「とにかく問題が起こった時点ですぐ来い」と言うと、「週刊『実は……』」が「デイリー『実は……』」になってしまいました。

社長室のドアはいつも開けていますから朝だけでなく、スケジュールの合間にも「実は……」が入ってきます。私は大きいほうのトイレに日に4、5回入り、洋式便器の蓋を降ろし、そこにしゃがんで何とか10分ほど休むという毎日です。

「社長、実は……」と言ってくるということは、その問題が担当部署では手に負えなくなり、2次災害、3次災害に広がる可能性があることを意味します。広範囲の部署に関わる問題を仕切れるのは社長だけです。事故や事件、トラブルで通常の運営ができない店が出ても、社長なら「直営店舗の営業を半分止めて、商品をもって加盟店の応援に行け」と即決で指示し、責任をとることもできます。