大事なのは戦略よりも戦闘力
上田社長は秋田県生まれ。1970年に山形大学を卒業し、伊藤忠商事に入社。プリマハム取締役も経験し、伊藤忠食品部門長補佐などを経て、2002年にファミリーマート社長に就任した。
ファミリーマートでは、そうはいきません。コンビニでは、1人ひとりの顧客の姿が見えないからです。販売データを集め、トレンドを分析し、どんな商品を出し、どういうオペレーションで売っていくかをつねに考えていても、顧客は非常に気まぐれです。
国内のファミリーマートには毎日550万人が来店されます。海外を入れると1000万人を超えます。国内の社員と加盟店のオーナーが1万3000人、店で働く従業員が15万人います。コンビニは365日、24時間営業です。1日として平穏無事な日はありませんね。
事件や事故、トラブルは時間と場所を選ばずに発生します。顧客が見えない世界では、その場その場で結論を出していかざるをえません。問題が発生したら即解決することを加盟店は求めます。加盟店はFC本部にロイヤルティを払っていますから、なおさらです。
そこで大事なことは戦略や戦術以上に戦闘力です。戦いの現場でいかに素早く反応し、解決するかという瞬発力です。
社長としても、いつでも勝負できる態勢を整えておく必要があります。だから、私がいま心がけていることは、取引先と夜の会食があっても、部下が残業していても、午後10時までには切り上げて家に帰り、女房と1時間ほど晩酌をし直してから、その日のうちに寝ることです。
毎年夏と秋に行う社長塾では、いろいろな意見が出ます。上司への具体的な批判や不満も出ます。ここでは何を言ってもよいことにしています。
そうした問題点や不満に対して、社員同士がいろいろ改善提案を出します。社長塾に上司は参加しませんが、上司を批判することで不利益を被ることを心配する社員もいます。そこで、「心配するな。社長とどういう会話をしたかと聞いた時点で、メールをくれれば、その上司はアマゾンの奥地か、永久凍土のシベリアのマーケット調査に行くことになる」と話しています。