「興味」の持ち方が違っていた

実際に大前さんにお会いしたときの私の最初の印象は「声でかいなあ」です(笑)。経営コンサルティングという仕事は、声がでかいからみんなが信用するんだな――と失礼なことを思っていました(笑)。のちに、声がでかいだけではない、ということがわかって、ちょっと反省しております(笑)。

実際にお会いして、今でも印象に残っていることがあります。大前さんは、インターネットに「興味」を強く持たれていたわけですが、その「興味」は、ぼくらエンジニアと少し違っていました。エンジニアは実際にそれをつくっている側なので、"as is"(現状そのまま)で理解している。それ以上でも以下でもなく、等倍ですべてがわかっている。ところが大前さんは、わたしたちが等倍で思っているインターネットというものに対し、100倍くらいのビジョンを持たれていた。インターネットが持つインパクトまで含めた視点を持っていらっしゃったということだと思います。そのインパクトを大前さんは対談のときにたっぷりと語られた。そのことはとても印象に残りました。

もうひとつ印象に残っていることがあります。94年時点の私は、パイオニアとして、今までなかったものを生み出さなければいけないので、いろんなことに躓いたりしながら相当に苦労していました。その私のパイオニアリング・アクションというものを評価して戴いた。当時30代だった私は、そこを評価して戴いたことに強い印象を持っています。

大前さんの話は簡潔で、面白い。なぜ面白いのか。これは私自身も誤解していたというか、よくわかっていなかったのですが、その後、公私に渡るご縁が続き、いろんな方をご紹介して戴くうちに、その理由に気づきました。

(後篇に続く)

(慶應義塾大学教授 村井純=談/インタビュー・構成=オンライン編集部)