自信がパフォーマンスに与える影響

これは、運動の強度や難易度が高い場合にも当てはまった。被験者に、前回よりも激しく、長く自転車を漕ぐように指示すると、2つのグループの差はさらに顕著になった。きつい状況に陥ったとき、「自分はできる」と信じていた被験者は、体力に関係なく、最後までやり遂げたのだ。何より重要なのは、自信を高めるように仕向けられていた被験者は、運動そのものを楽しんでいたことだ。

この研究は、「自信の程度は、パフォーマンスにどう影響するか?」という素朴な疑問を探求するものだった。その答えは、この前後に実施された多くの類似研究と同様、実にシンプルだった。つまり、「極めて大きく影響する」だ。あるタスクを成し遂げる自信があると、その作業中に気分が良くなり、作業の質も高まる。

この考えの起源は、カナダ系アメリカ人の心理学者アルバート・バンデューラにさかのぼることができる。

1925年にカナダ・アルバータ州のマンデアに生まれ、2021年に亡くなったバンデューラは、極めて大きな影響力を持つ心理学者だった。その主な理由は、彼が1977年に発表し、その名を一躍有名にした「自己効力感」という概念にある。

「能力そのもの」よりも重要なこと

バンデューラは自らの過去10年間の研究をもとに、「人間のパフォーマンスや幸福にとって重要なのは能力そのものだけではなく、自らの能力についてどう感じるかだ」と主張した。自己効力感とは、そのような感情を表現するために彼がつくった用語であり、目標を達成できるという信念をどれだけ持っているかを意味している。

アリ・アブダール『Feel Good 快適な努力で最高の成果を上げる方法』(東洋館出版)
アリ・アブダール『Feel Good 快適な努力で最高の成果を上げる方法』(東洋館出版社)

大まかに言えば、自己効力感とは「自信」を表す心理学の専門用語である。コントロール感を築くための1番目の方法は、自信を高めることだ。

バンデューラが初めて自己効力感という概念を提唱してから半世紀のあいだに、非常に多くの研究が、自らの能力に対する自信があればあるほど(すなわち、自己効力感が高ければ高いほど)、実際に能力が高くなることを示してきた。心理学者のアレクサンダー・スタイコビッチとフレッド・ルーサンスは1998年、被験者延べ約2万2000人を対象にした114件の研究を分析し、バンデューラの主張の正しさを裏付けた。

そう、「できる」と信じることは、「自分はできる」と確認するための第一歩なのだ。

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