仮説「自信は能力に影響を与える」を検証した

コントロール感の科学を紐解く旅を、数十人の運動嫌いな被験者でいっぱいの実験室から始めてみよう。

この28人の女子学生が被験者として選ばれた唯一の理由は、彼女たちに日常的な運動の習慣がなかったからである。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者たちは、彼女たちの運動不足の事例が研究の契機になると考えていた。彼らは、後に国際行動医学会誌(International Journal of Behavioral Medicine)に掲載されたこの研究で、「運動能力に対する自信は、実際の運動能力に大きな影響を与えている」という単純な仮説を検証しようとした。

実験ではまず、28人の学生全員に固定式自転車で一定時間漕こいでもらい、その間の心拍数とVO2 max(運動中に身体が吸収・使用できる酸素の量)を測定した。

運動が終了すると、そのパフォーマンスに基づいて、被験者の学生はA群とB群の2グループに分けられた。短時間の休息の後、A群(「自信がある」グループ)の学生には、「先ほどの運動の結果、年齢や運動経験が同じ女性たちと比較して、体力が最も優れていた」と伝えた。

一方、B群(「自信がない」グループ)の学生には、「先ほどの運動の結果、年齢や運動経験が同じ女性たちと比較して、体力が最も劣っていた」と伝えた。

3日後、実験室で起こった「驚くべき結果」

実は、これは実験のための嘘だった。つまり、「自信がある」グループは実際には体力が優れているわけではないし、「自信がない」グループも体力が劣っているわけではない。被験者は運動テストの成績とは無関係に、ランダムに2群のどちらかに割り当てられただけだった。

研究者たちの真の関心は、次の段階にあった。3日後、被験者は再び実験室で約30分間の運動を行い、その後で「今回の運動がどれくらい楽しかったか」を評価するよう求められた。

結果は驚くべきものだった。

初回の運動後に「体力が優れている」と告げられた「自信がある」グループは、「体力が劣っている」と告げられた「自信がない」グループよりも、2回目の運動をはるかに楽しんでいた。