一方ショップ運営とは、有名ブランドやショップを誘致し、売り場の割り当てや、収益目標などを話し合い、あとは各々のテナントが品揃えから価格を決め、在庫のリスクも持つという、言うならば「場所貸し」である。

前出の矢野経済研究所の松井研究員は、どちらを重視するかは百貨店によって異なると言う。

「自主運営は、百貨店バイヤーの力量次第で売り上げが左右されがちです。このノウハウを持つ伊勢丹本店(新宿)はバイイング(仕入れ・調達)力に定評があります。一方でショップ運営をいち早く大胆に取り入れ、業績を伸ばしているのがJフロントです。こうした戦略の違いから、伊勢丹は商品単位で、Jフロントはショップ単位で売り場をリニューアルさせていきます。Jフロントはショップ運営で売り場を構成しますので、館の独自性という点を打ち出しにくい。すなわち、バイイングに起因する『百貨店』のイメージやブランド力が低下し、駅ビル、ショッピングセンターと差別化が難しくなるなどの問題を抱える可能性が生じます」

Jフロント会長・奥田は、ショップ運営にどんなメリットを感じたのだろうか。

「現在85%がショップ運営ですが、15%は自主運営であり、どちらかにすべてを託しているわけではない。ただしお客様が高齢化し、とりわけ若いお客様にご来店いただこうと考えたとき、これまでの発想を捨てなくてはいけないと危機感を持ったのです」

他のショッピングセンターやファッションビルに比べ、百貨店はかなりの高コスト体質といえる。大都市の超一等地に広大な面積の店舗を構えなくてはならないし、量販店とは比べものにならない豪華な内装も必要だ。そして、高い質のサービスを実現させるための人件費である。これらすべては百貨店の強みでもあり経営サイドとしては頭の痛い問題だ。奥田がまず見直しを図ったのは「人件費」だった。