「百貨店など、若い人は誰も行かない」――。消費不況と高齢化のダブルパンチから長期間にわたって低迷する百貨店業界。最低最悪のマーケット環境にあって躍進し始めたまったく新しいビジネスモデルの本質を明らかにする。

もがき苦しむ百貨店業界で躍進

百貨店業界が、もがき苦しんでいる。日本百貨店協会が発表した2012年の全国百貨店売上高は、6兆1453億円と前年比わずか0.3%アップとなり「16年連続前年実績割れ」の汚名だけはまぬがれた。しかし閉鎖店の増加から2年前の実績すら下回っている。

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百貨店は、1991年度を境に、右肩下がりの構造不況業種

特に、近年は経済不況、リーマンショック、東日本大震災と苦境に立たされた。消費者の財布の紐は緩まず、固くなる一方だ。「国民総中流」と言われた日本も、今では年収300万円以下の世帯が急激に増加し続け、所得格差は広がり続けている。「百貨店で買い物なんてしたことがない」と言う若者も珍しくない。

そんな逆境の中、「大丸松坂屋百貨店」を運営するJ. フロント リテイリング(以下、Jフロント)は躍進を続けている。

「脱百貨店」を掲げ積極的に業態改革を進めてきたのがJフロントである。ポケモンセンターや石井スポーツなどこれまで百貨店のテナントとしては考えられなかったテナントの入る店舗づくりを進め、パルコのような若者向け小売りのM&Aも果敢に行った。13年1月に同社が発表した、大丸松坂屋の12月の売上高は1%増で、5カ月連続で前年実績を上回った。また、13年2月期の前期比売上高は17%増の1兆1050億円と、従来の予想であった3%増、9730億円を大幅に更新する見込みだ。さらに、日経リサーチによる、関西圏商業施設の利用実態調査における集客力ランキングでは、「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」を抑え「大丸梅田店」が首位に輝いた。