日本で働く外国人労働者には、円安・物価高騰で収入の減少に苦しむ人も多いという。ジャーナリストの澤田晃宏さんは「違法と知りつつも『手渡しバイト』に手を出す留学生や、技能実習生などの労働者もいる」という――。
Facebookで「違法バイト」の情報がやり取りされている
フェイスブックの検索窓にベトナム語で「việc làm lương tây」(手渡しバイト)と打ち込むと、複数のグループが表示される。そのうちの一つ、メンバーが14万人を超える公開グループを覗いた。
ホーム画面にはイラストと共に「手渡し確定申告なし求人(ジャパン)」とある。都市部の食品製造工場や飲食店、ホテルなどの清掃の求人のほか、地方の農業の求人などもある。なかには募集条件に「不法在留者」と明記し、宿舎を準備するとアピールするものもあった。
留学生への締め付けが厳しくなった
こうした手渡しバイトが横行し始めたのは、単純労働を認める在留資格「特定技能」が新設された2019年頃から。新たな在留資格を創設する一方、留学生に対する締め付けが厳しくなったことが原因だ。
九州地方の日本語学校幹部は話す。
「留学生には資格外活動として、週28時間のアルバイトが認められていますが、その上限を超えて働く出稼ぎ目的の学生が多かった。人が集まりづらい深夜帯のコンビニや食品工場など、留学生は貴重な戦力になっていた」
だが、単純労働を認める在留資格を創設したことで、国は「出稼ぎが目的なら特定技能」と線引きし、これまで黙認していたと言わざるを得ない週28時間を超えて働く留学生の在留資格更新を認めないなど、留学生の在留審査を厳格化した。
「とはいえ、週28時間では時給のいい深夜バイトでも最高月収15万円程度。授業料と生活費を払い、そこから母国に仕送りするには足りない。農家などの需要もあり、週28時間にカウントされない手渡しバイトが広がっていきました」(前出の日本語学校幹部)
28時間を超えるバイトは「違法行為」である。給料をわざわざ「手渡し」にしているのは、もちろん違法性の認識があるからだ。