「違法バイト」をやらないと生活できない
問題なのは、その複雑な変更手続きの間、アルバイトさえ認められていないことだ。しかも手続きが数日であればいいが、実際には数カ月間もかかる。
出入国在留管理庁は申請の処理期間の目安を在留資格変更許可の場合「2週間から1カ月」としているが、現実には平均45.8日(24年第1四半期)かかっている。追加書類の手続きなどを求められた場合は、半年程度かかることだってある。
半年間の無職生活を支えたのは「違法な手渡しバイトだった」と、ベトナム出身の男性(26歳)が振り返る。
「建設現場の解体工事や足場の仮設工事のバイトをしていました。日給は1万3000円で、保険や税金も引かれず、すべて手取りになります。仕事は毎日あって、休まずに働き続けることもできます。普通に働くより、2倍近く稼げます」
この男性は在留資格変更許可後に、予定通り転職が決まっていた会社で働き始めたが、こんな言葉もこぼしていた。
「不法就労とはわかっていましたが、やるしかなかった。普通に働くと税金が高く、転職を辞めようと思った時期もあった」
国の改革が不法就労を助長している
国の働き方改革や在留資格制度が不法就労を助長しているとも言える。外国人の支援団体幹部は、こう危機感を話す。
「SNSを中心に手渡しバイトの情報が増え、転職の間の空白期間に利用する特定技能外国人が増えています。税金なども引かれず、普通に働くより手取りが増えるため、放置しておくとそのまま不法就労者として働く者も出てくる恐れがあります」
SNSには、今回取り上げたグループのほか、不法在留者を対象としたコミュニティが無数にある。極地的な人手不足対策のために国があえて黙認しているとまでは思えないが、もし認知していながら放置しているのなら怠慢でしかない。
目下、10月より厚生年金に加入するパートタイム労働者の範囲が拡大される。企業からすれば、ただえさえ社会保険料が高いのに、企業の負担がより一層拡大するという不安が大きい。
そんななか、広がりを見せるスポットワーカーだけではなく、手渡しで働いてくれる外国人は貴重な存在だろう。
違法なバイトが今後も活用される可能性は高く、政府としても何らかの対応が必要になるのではないだろうか。