しかし、企業は内部統制導入時こそお金をかけたものの、その後リーマンショックが発生し、コストをかけにくくなったことから会計士のニーズは激減した。また、IFRS適用に後ろ向きとなり、監査法人自体の経営も悪化し始めている。

加えて特筆したいのは、日本では会計への意識が高くないことである。

日本企業は営業や開発が経営の重要なファクターであり、会計は“後付け”という発想が依然として根強い。しかし、繰り返し述べているように、財務諸表には財務改善のヒントはもちろんのこと、経営戦略の材料も隠れている。

その材料を見つけ出すのがまさに会計士の役割であり、それができてこそ、「続けて使いたい」「コンサルティングをしてほしい」と思われる会計士なのである。そうしたスキルとセンスがある会計士であれば、企業が幹部候補生として採用するということも十分考えられる。そうでない会計士が多いから、需要が伸びてこないのだ。

会計士を目指す若者から「監査法人に入社できますか?」といった質問を受けることも少なくないが、「資格を取得したら監査法人に入ってアガリ」という固定観念は変えていく必要がある。会計士としてではなく、一般社員として企業に入社して会計の知識を活かすのもいいし、営業職など、現場を学んでから会計士を目指すのもいい。

会計士という業務独占資格を活かすことに固執すると自らの領域を狭めることになる。監査業務に捉われず、自ら何かを発見する能力、生み出すセンスが、会計士の存在意義を高めるのだと信じて疑わない。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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