確定申告といわれても、会社員の多くは「自分には関係がない」と思っているのではないだろうか。

会社員は、毎月の給与の中から所得税が徴収されている。これが「源泉徴収」である。日本で源泉徴収制度がスタートとしたのは、1899(明治32)年である。当初対象になったのは利子所得のみで、勤労所得も対象となったのは、太平洋戦争の前年、1940(昭和15)年で、戦費調達のためにドイツに倣ったといわれている。

源泉徴収は、企業が従業員の所得税を計算して給与やボーナスから天引きし、従業員に代わって納税するものだ。国にとってはとりっぱぐれがなく、このうえない制度といえる。企業は税額の計算、管理、納税の手間がかかり、事務負担は大きい。実は、40年の導入後には徴収代行手数料として、従業員1人当たり50銭が交付されていたという。

さらに47年には、毎年4月に年度の所得を見積もって税額を計算する「申告納税制度」と、「年末調整制度」が始まる。当時は戦後の急激なインフレという特殊な経済事情があり、年度の終わりに徴税したのでは、貨幣の実質的価値が下がっている可能性があったからだ。

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源泉徴収のシステムと問題点

会社員の方はご存じと思うが、年末調整とは源泉徴収で納めた税金を精算するもの。源泉徴収では、支払った生命保険料などが所得から差し引かれる生命保険料控除などが考慮されていないため、正しい税額を計算しなおす年末調整を行い、納めすぎた分の還付を受ける。

この年末調整を行うのも企業であり、当時、深刻な人手不足だった徴税当局(財務局・税務署)が、業務を企業に押し付けてしまったといえる。