個人の所得税の確定申告が着実に増えている。国税庁の公表データによると、この10年を見ても1999年分の2028万人から右肩上がりで推移し、2008年には2369万人と過去最高を記録した。つまり、国民の5人に1人という計算になる。ただ、リーマン・ショックの影響からか、08年の申告納税額は2兆6495億円と、対前年比88.4%に落ち込んだ。
この背景を、税理士法人タクティクスの矢口岳史税理士は次のように分析する。「99年頃から3年ほどは、不況で飲食店など個人事業での独立・開業が多かった。その後の04、05年頃はサラリーマン大家が流行している。ここ2、3年はビジネスマンの金融投資、とりわけFXブームが過熱。これらの所得は基本的に確定申告が必要となる。それが増加要因だろう」。
と同時に、確定申告を取り巻く環境が整備されたことも見逃せない。国税庁が納税者視点からのPRをすることで確定申告のメリットが認知され、申告様式も簡略化してきている。なかでも、源泉徴収や医療費控除による還付が広く認知されるようになり、還付申告者の数は08年分では1283万人あまりと申告者の半数を超す。
インターネットや雑誌等でも税金に関するコンテンツには注目が集まっている。矢口氏は「知らないと損をする情報がたくさんあることに気づいてほしい。申告すれば還付される所得はかなりある」とアドバイスする。長引く不況で庶民の金銭感覚はシビアになっており、個人の申告意欲はしばらく衰えそうもない。
(ライヴ・アート=図版作成)