仕事帰りの1杯、2000円でお釣りがくる。昨年夏以降、そんな居酒屋が目立つようになった。多くの店でドリンクや料理の値段はおおむね100~300円台。280円前後の均一料金のところも目立つ。家に戻れば夕食が用意されているとはいえ「やっぱり軽く飲みたい」というサラリーマンたちには心強い味方だ。

黒字経営をしている居酒屋
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黒字経営をしている居酒屋

老舗チェーン・養老乃瀧が2008年12月から新業態として出店を開始した「一軒め酒場」も激安居酒屋のひとつ。すでに関東を中心に8店を数えるが、サッポロ生ビールの中ジョッキが330円、串カツ1本が99円、枝豆は1皿150円だ。一番高いほっけ焼きでも350円。平日の夕方、すでに満席状態で、平均客単価は1700円だという。

同社首都圏本部営業開発部の谷酒匡俊マネージャーは「不景気を、ある程度予測して展開した。キーワードは安心、早さ、Always(いつも)安い。しかも既存の店舗よりも利益率を上げることに成功した。今後は積極的に出店したい」と語る。黒字の秘訣は徹底した経費の見直し。メニューの絞り込みはもとより、什器も前店舗のロゴがない限り再利用し、壁紙の汚れもポスターで隠した。

とはいえ、こうした業態展開は仕入れ力にまさる大手チェーン向きといっていい。たとえば、「鳥貴族」は280円均一、モンテローザグループの「厨房うちくる」は268円均一といった具合だ。デフレ経済下、呑兵衛たちは価格の動きに敏感だ。懐が寂しいだけに、低価格志向の居酒屋人気は、当分の間衰えそうにない。

(ライヴ・アート=図版作成)