2012年の公認会計士試験合格者数は前年比10.8%減の1347人にとどまった。06年に金融庁が会計士を5万人に増やす構想を打ち出し、この年は前年の2.3倍の3108人、翌年は4000人台を突破したが、11年は1511人まで減少し、昨年は06年以降、最少の合格者数となっている。
しかし、1990年代の合格者数は500~1000人弱であり、当時からすると12年の合格者数は「多く」、さらにいえば「過剰」と感じる水準となっている。
米国は人口3億人超に対し、公認会計士(CPA)は30万人といわれている。日本は人口1.2億人に対して3万人前後。人口は半分程度なのに会計士は米国の1割ほどであり、会計士が少ないようにみえる。
とはいえ、日本には公認会計士と同等の難易度を有する会計の専門資格として税理士という資格が存在する。また、米国には日本のような厳格かつ広範囲に定着した年末調整の制度がないため、個人も各自が所得の申告を行っており、CPAが税務手続きをすることも日本より多いようだ。
日本の公認会計士が上場企業の会計監査を業務の主体としているのに対し、米国のCPAは日本の会計士以上に税務も手掛ける場面が多くなるなど、そもそも業務の範囲や潜在的なニーズが異なるのである。
会計士を増やそうとした背景には、会計士の需要が高まるという“幻想”があったのだ。
06年前後は、内部統制の整備で会計士のニーズが高まった時期である。内部統制とは、業務の有効性、効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産の保全を図るためのもの。その整備のために会計士の仕事が増大し、一時期は会計士不足の状態となり、“内部統制バブル”なる言葉も囁かれたほどである。
さらに14~16年には国際会計基準(IFRS)の適用が見込まれ、会計士ニーズのさらなる拡大が期待された。世界的に景気が良かったことも、必要性を高めに見積もることにつながっていたはずだ。