ビジネスチャンスを掴む“グーグル使い倒し術”とは
公認会計士と聞くと、たいていの人は「会社の決算が適切な会計処理で行われているかどうかを厳格に監査するプロフェッショナル」と思い抱くことだろう。しかし、そんなイメージを柴山さんに当てはめて初めて会うと、見事に裏切られる。
「どこにビジネスチャンスがあるのか」「どうしたら利益を伸ばせるか」など、経営者的な言葉が次々と口をついて出てくる。それもそのはず。柴山さんは大手監査法人を辞めた後、起業と撤退を経験するため、鯛焼き屋を始めた変わり種なのだ。
2004年6月から新規顧客の開拓を目的に、会計の観点で時事問題を解説するメルマガの発行を開始。「数ある自動車メーカーのなかで、なぜトヨタだけが突出するのか、その理由を財務分析しただけでも反響が大きかった。当初26人だった購読者は5万5000人を突破した。本書の企画もメルマガの発想がベースになった」という。
では題材を何にするか。思案したあげく目の前に浮かんできたものが、「メルマガを書くための情報検索で、毎日利用しているグーグルだった」。確かに同社は同じ分野で先行したヤフーを業績面で引き離し、IT業界の雄たるマイクロソフトをも凌駕する勢いの注目企業だ。
しかし、本書の大きな特徴は、会計士が書いたにもかかわらず、同社の財務分析を通した会計知識の解説にとどまらない点にある。第4章「グーグルニュースから学ぶ世界経済の行方」、第5章「グーグルニュースから学ぶ日本経済の行方」で、気になるキーワードを取り上げながら、柴山流“グーグル使い倒し術”が詳細に紹介しているのだ。
たとえば、少子高齢化で懸念される「人口減少」について、「人口 推移」と入力して検索してみせる。そして、ヒットした「国立社会保障・人口問題研究所」のサイトから、東京・大阪・名古屋の三大都市圏人口の総人口に対する割合に注目する。
すると、三大都市圏だけで日本全体の44.9%に当たる5742万人の人口を抱えることがわかる。さらに、三大都市圏の面積が国土に占める割合のデータを加え、「わずか6%ほどの面積のなかに、日本の総人口の44.9%が集中している」という見方を引き出す。
経済面への悪い影響ばかり強調される人口減少の問題だが、そう捉え直してみると、「新しいビジネスを立てる際の視点として役立つはずだ」と柴山さんは強調する。
データや情報を組み合わせることで、いままで見えなかった物事の裏側や本質が見えてくる。本書はウェブ2.0時代の新しい経済分析の実践書なのかもしれない。