住宅価格の下落に歯止めがかからない

中国の不動産バブル崩壊が始まってから、早くも数年の時が過ぎた。中国政府が対策しているにもかかわらず、住宅価格の下落に歯止めがかからない。むしろ、中国主要都市の住宅価格の下落ペースは加速する傾向さえ見える。

地方都市の中には、住宅の在庫圧縮に10年程度を要すると試算されるケースもある。中国政府は、地方政府に対して住宅市場の下支えのため買い取り策などを指示したが、今のところ目立った効果は出ていない。地方政府は財政の悪化により、不動産市場への介入を緩めざるを得ないところも出ている。地方政府が新築住宅の価格指導を停止し、住宅価格が急激に下落するケースもある。

ここから先、どこまで価格が下がるか予想は難しい。中国の家計部門が抱える不動産ローンを見ても、不動産バブル崩壊の影響が経済全体に重大な影響を与えていることがわかる。当面、個人消費が盛り上がることは考えにくい。不動産市況の回復なくして、中国経済の本格的な回復は望めないだろう。

中国の習近平氏
写真=中国通信/時事通信フォト
2024年9月14日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)創設70周年祝賀大会で重要演説を行う中国の習近平氏〔新華社=中国通信〕

“中国のシリコンバレー”でも新築価格が下落

中国国家統計局が発表した8月の新築住宅価格は、主要70都市のうち67都市で前月から下落した。下落した都市の数は前月から1都市増えた。前月から価格が上昇したのは上海と南京、前月から横ばいだったのは陝西省西安だけだった。

政治の中心地である北京や、IT先端企業が集積する“中国のシリコンバレー”と呼ばれる深圳でも新築住宅の価格は下落した。海外の金融データ企業の試算では、70都市の新築価格は単純平均で前年同月比5.3%下落した。約9年ぶりの下落率といわれている。

住宅の需給動向を反映する中古住宅の価格も、下落トレンドは明確になっている。8月、全70都市のうち、下落したのは前月から2都市増えて69だった。70都市全体で前年同月比の下落率は8.2%だ。

2023年半ば、不動産デベロッパーの破綻懸念を背景に、中国の新築・中古住宅ともに下落に拍車がかかった。足許の価格下落ペースは当時を上回る。不動産バブル崩壊により住宅市場の厳しさは増している。