世界を熱狂させた「EVブーム」は終わるのか
足許、米国や欧州を中心に、“電気自動車=EVシフト戦略”の修正を余儀なくされる大手自動車メーカーが目立っている。独フォルクスワーゲンは、東部ツウィッカウのEV工場で臨時工を解雇した。9月上旬、独国内工場の閉鎖検討も明らかになった。それ以外にも、GMやフォードなどにもEVシフトを見直す動きがでている。
その背景にあるのは、世界的にEV販売が鈍化していることがある。ここへきて、EV販売が伸び悩み傾向になっている理由は、補助金支給がないとEVの価格が相対的に高いことがある。また、発火問題などバッテリーの耐久性の不安が指摘され、航続距離もハイブリッド車(HV)などを下回ることもある。充電ステーションなどインフラ整備の遅れもEV需要の減少要因になったと考えられる。
ベンツやボルボは「100%EV」目標を撤回
主要先進国の自動車メーカーは、EVを含めた自動車全体の生産体制の再構築を検討する必要がありそうだ。それに加えて、水素を用いた新しい動力源の開発に取り組む必要があるだろう。各メーカーにとって、資金負担の増加など厳しい状況になることも懸念される。
今後、米国経済の減速が進むようだと、世界の自動車需要の鈍化が予想される。わが国を含め主要国の自動車メーカーは、事業環境の急速な変化に対応することが求められるだろう。自動車産業がわが国経済の大黒柱であることを考えると、わが国の景気先行きに不透明要素が増えることも懸念される。
このところ、EV計画の修正を余儀なくされる、欧米の大手自動車メーカーが相次いでいる。ドイツのメルセデス・ベンツやスウェーデンのボルボは、2030年にすべての新車をEVにする経営目標を撤回した。ベンツは燃費効率の高い新型エンジンの開発に着手した。フランスのルノーは、EV事業の“アンペア”の新規株式公開を取りやめた。