「バッテリー問題」がGMとトヨタのシェアに表れている
EVには、従来から指摘されてきた問題点がある。EVに搭載されている、リチウムイオン系のバッテリーの安全性に関する懸念だ。8月、韓国インチョンのマンションの駐車場で、中国製のバッテリーを積んだメルセデス・ベンツ“EQE350+”から発火し、大規模火災が起きた。ベンツにバッテリーを提供しているCATLはバッテリーの安全性に問題があることを認めている。
この火災問題以前にも、韓国LGエナジーソリューションなどが開発したバッテリーを搭載した米欧企業のEVで発火問題が起きた。充電設備を含め、EVバッテリーの発火がいつ、どのようにして起きるか、根本的な原因は解明されていない。
社会全体で安心、安全にEVを利用するインフラの整備も遅れた。自動車による長距離移動が多い米国では、充電ステーションの不足などからEVよりもHVなどを選好する消費者は増えた。1~8月期、米市場でトップのGMのシェアは前年同期比0.3ポイント減の16.4%、第2位のトヨタは同1.1ポイント増の14.8%だった。EV利用に関する消費者の不満、懸念がGMとトヨタのシェアの差に影響したようだ。
充電ステーションの少なさ、冬季の運転リスク…
洋上風力発電などを使ったEVの生産と普及を重視した欧州市場でも、充電ステーションの設置は遅れているという。わが国でも充電ステーションは少ない。EVシフトが進んでいる中国でさえ、旧正月などの連休中にEVで帰省したものの充電ができないケースが報じられた。
EVの航続距離は相対的に短い。充電インフラの不足に加え、異常気象による寒波や熱波の発生によってEVの航続距離は短くなる。カタログ上400km程度の航続距離を持つEVの場合、気温が氷点下6度に下がると航続距離は60%程度に落ちることもあるようだ。
また、EV貿易戦争のリスクもある。欧州委員会や米国政府は、中国製EVに対する関税率を引きあげた。その背景には、中国は産業補助金などを拡充して過度な価格競争を引き起こし、自国の雇用を脅かしているとの批判がある。EVの値崩れ、関税などのリスクに対応するため中国でEVを生産し、輸出する体制の見直しを余儀なくされる主要先進国の自動車メーカーも増えるだろう。