自民党総裁選は過去最多となる9人が立候補し、うち女性は2人だった。コラムニストの矢部万紀子さんは「高市早苗さんと上川陽子さんが立候補し、野田聖子さんが出られなかったのを見て複雑な気持ちになった。“おじさんの詰め合わせ”の中で女性が出世する難しさを感じた」という――。

“高市氏と上川氏が立候補”に抱いた複雑な感情

自民党総裁選のキャッチコピーは「THE MATCH」だ。9月27日に投開票されるが、党員と国会議員しか投票できない内輪の選挙だ。なんとか関心をもってもらおうと、「選挙」でなく「試合」、「試合」でなく「MATCH」としたのだろう。

この言葉の浸透度は不明だが、ポスターはかなり有名だ。歴代総裁26人の写真が使われ、目立つトップ3は安倍晋三、田中角栄、小泉純一郎。

そんなレイアウトも話題になったが、何と言っても立役者はトラウデン直美さん。ポスターが発表された8月21日の「news23」(TBS系)で「おじさんの詰め合わせって感じがする」と述べたのだ。

即、ネットが盛り上がった。「おじさんの詰め合わせ」は「パンダは白と黒」と同じ見ての通りなのだが、賛否両論の熱戦に。はて?

ということで、「THE MATCH」の話はおしまい。ここからは「試合」の話をする。

立候補する9人のうち、2人が女性だ。高市早苗さんと上川陽子さん。よかったと思うと同時に複雑な気持ちになる。立候補を模索し、あきらめた野田聖子さんと比べて、「やっぱり、出られるのはこういう女性ね」。そんな気持ちになる。

“安倍一筋”を貫く高市氏

高市さん63歳、当選9回。上川さん71歳、当選7回。

2人に共通するのは、2世政治家でないことだ。高市さんはニュースキャスター、上川さんはシンクタンク勤務などを経て政治の道へ。64歳、当選10回の野田聖子さんは、元建設大臣の祖父を持つ。

今回、総裁選に立候補した男性7人のうち、5人が義父も含めて政治家の父を持つ。男性の2世は多数派で、女性の2世は逆に出られない。これって偶然ではない。これこそ、女の出世道を映している。と思っている。

高市早苗氏
高市早苗氏(首相官邸HP

高市さんは3年前の総裁選にも立候補している。2連続立候補は高市さんと河野太郎さん(もちろん2世)だけで、それだけですごい。で、それを支えているのは一貫した「右側通行」だ。

2006年、第一次安倍内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣以来、ずっと安倍一筋=右側通行。9月9日の立候補表明では日の丸を掲げ、「選択的夫婦別姓→ノー」「靖国参拝→イエス」と「安倍好み」を語った。20人の推薦人のうち14人が安倍派だ。

ただし前回と違って、今回は安倍さんがいない。しかも小林鷹之さんという非・2世、43歳という若手の右側通行の人が立候補を表明している。

そんな状況で高市さんが打ち出したのは、「日本列島を強く、豊かに」と「サナエあれば、憂いなし」だ。