平成のベストセラー『「超」勉強法』発売から約30年。著者の野口悠紀雄氏は今も独学を続けている。なぜ知的好奇心が衰えないのか? その理由を探ると、学びのツールにChatGPTを取り入れているのだった──。

知識と好奇心がどんどん高まる「AI勉強法」

83歳になった今も、私は独学を続けています。独学こそ最も身につきやすく、最も楽しい勉強法だからです。なぜなら学校で講義を受けるのと違い、自分にとって必要なことだけ重点的に、都合がいいときに学べるからです。大事な点ですが、費用も安く上がります。

私はついこの間まで外国語を学んでいました。しかし、仕事が忙しくなったので、最近は原稿を書くうえで必要な勉強が中心になっています。具体的に言えば、AIと経済がテーマです。

年を取ると、今まで蓄積されてきた知識がありますから、勉強はいっそう楽しくなります。トルストイの『戦争と平和』に、ボルコンスキーという公爵が出てきます。引退してから高等数学の勉強に没頭している老人で、私が理想とする人の一人です。作者のトルストイも、70歳を過ぎてからイタリア語の勉強を始めたそうです。

「勉強はしたいけど、どうやって進めていいかわからない」と逡巡している人にこそ、独学をお勧めしたいと思います。インターネットとAIの発達により、20年前には考えられなかった効率的な勉強が可能になったからです。

独学を続けるには「自慢したい」と思う

独学を成功させる第一歩は、とにかく始めてみること。そのために必要なのは、何をやりたいかという問題意識をもつことです。簡単に言えば、社会や物事に対して何らかの疑問をもつことがスタートになります。

疑問をもつための訓練として前々から私が推奨しているのは、「1日1語検索」です。毎日ひとつ、知らなかった言葉や、意味のわからない略語などについて、検索をかけて調べるのです。

1日1語なら簡単だと思うかもしれませんが、疑問をもつという習慣づけは、実はなかなか難しいものです。疑問を抱くには、好奇心を忘れないことです。少しずつ知識が身につけば、新たな好奇心が自ずと湧いて、加速度的に勉強したくなっていくものです。

独学は継続が難しい、という声をよく聞きます。トロイの遺跡を発見したことで有名なドイツの考古学者シュリーマンは、18カ国語を独学で身につけたと言われます。彼の唱えた勉強法には、「大きな声でたくさん音読する」「興味のある対象について常に作文を書く」などがありますが、面白いのは、外国語を身につけるために、わざわざ生徒を雇って教えたことです。

誰かに教えることは、自分が学んだ内容の確認になり、励みにもなります。お金を払ってまでやらなくても、現代ではブログやnoteに連載したり、SNSでグループをつくって得意な分野を教えあったりするのが、いい方法ではないでしょうか。連載に読者がつけば、期待に応えて新しい知識を書き込まなければいけません。「自慢したい」という動機も重要です。

自分では勉強しているつもりなのに、身につかないと嘆く人がいます。それはやり方を間違っているだけなので、もったいない話です。どんな分野の勉強にも必ず当てはまる、3つの原則があります。

1つ目が「解き方や文章を暗記する」。多くの人が「自分の頭で考えよ」と説きます。しかし私に言わせれば、これほど無責任で、人を惑わせるアドバイスはありません。

土台のない場所に、新しいビルは建てられません。暗記によって多くの知識を培っている人のほうが、独創性を発揮できるのです。

たとえば外国語なら、単語ではなく文章を丸暗記してしまう方法が、一番有効です。五感を使うほうが効果があるので、ひたすら音読しながら、なるべく長い文章を覚えていきます。大意を大摑みしつつ読み、日本語に翻訳しながら理解するクセを避けるように気をつけます。題材は、小説や随筆がいいでしょう。英語なら、シェイクスピアや、わかりやすい言葉が使われている英米の政治家の演説がお勧めです。

2つ目が「重点化」です。学び方が平板なことも、身につかない原因です。勉強上手な人は全体を一様に学んでいるのではなく、重要な部分とそうでない部分の見分け方が上手なのです。

問題は、重要な部分がどこにあるかを見出す技術です。それが3つ目の「全体を把握する」に繋がります。

【図表】これが学びの正解「超」勉強法3原則