ただし各航空会社の理解と協力が不可欠

そのためには、調整しなければならないことがいくつかあります。もっとも大きな課題は各航空会社のスケジュールです。

現状のスケジュールは、そこまで緻密な時間管理に対応する精度になっていません。各航空会社が飛びたい時間はだいたい決まっているので、これを調整して飛ばしているだけです。だからどうしても、着陸時の滑走路で競争が起きてしまいます。

4次元の管制では、航空会社のリクエストを受けたうえで、すべてのデータをインプットして理想の順番、出発時刻を割り出し、分単位で割り当てていきます。その結果、19時に出発を希望している便を、あえて19時10分の出発に割りふることもあるかもしれません。それでも全体の効率は上がり、上空で待機して着陸の順番を待つこともなくなるはずです。

しかし、4次元の管制もまだ、道半ばです。空港間の数百キロメートルあるいは数千キロメートル先の予測精度を高めるというのは、並大抵のことではないようです。

管制塔
写真=iStock.com/kanzilyou
※写真はイメージです

着陸時刻は「誤差3分」でも致命的

では、将来的に航空管制の業務の多くの部分を、テクノロジーが代替することは可能なのでしょうか。たとえば、AIの導入によって、より精度の高い予測にもとづく「4次元の管制」が可能になるのかというと、私はやはり簡単ではないと考えています。

航空は、自動車や鉄道とは異なります。気象条件も変化するし、飛行機の性能も機種や重量によってまちまちです。そのうえで、どれほどの精度で予測が可能なのかという問題に行き着きます。

テクノロジーの進化によって、時間にして、おそらく着陸20分前の時点で算出する着陸時刻を、誤差3分程度の精度にすることは可能だろうと思いますが、その3分は航空管制における誤差としては大きすぎます。3分もあれば2機の離着陸が可能です。つまり、3分の誤差で、滑走路の使用順位が入れ替わることが十分にあり得るわけです。

しかも、この「着陸20分前時点での誤差3分」という数字は、人間が予測する精度とくらべて同等か、低い数字だと思っています。AIに任せるなら、これを超えなければ意味がありません。意味がないというか、使いものになりません。計算機が人の暗算よりも遅なら誰も使わないようなものです。