「ドナルドだけです」
ホワイトハウスでハグしたり、ドナルドとファーストネームで親しげに呼んでみたり。危険がいっぱいの日米首脳会談を持ち前の明るさと大胆さで乗り切り、内外で「大成功」と評価を高めた高市早苗首相だが、帰国後に国会論戦が再開されると、妙に歯切れの悪い答弁が続き、不機嫌で投げやりな態度も目立つ。内閣支持率は、依然高水準なのに何がうまく行っていないのだろうか……。
「世界に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけです」と、歯の浮くような称賛でドナルド・トランプ大統領のハートをわしづかみにした、とまで言われた例の冒頭発言も、その後の評判はあまり芳しくない。
高市首相自身は「渡米する飛行機の中で、徹夜で考えた」と練りに練った表現だとアピールしたが、その真意は「中東の戦争を平和に持っていけるのも、世界経済を改善できるのもトランプ大統領の気持ちにかかっているといった思いを伝えた」のだという。G7の欧州各国のなかにも「国際法違反」を明言する国が出始めているなかで、突出したアメリカ追従の言い回しは、今後の日本の立場を難しくする心配はないのだろうか。
「情けないが、これが日本の現実だよ」
「もちろん、トランプが始めたイラン攻撃は国際法違反の疑いが濃厚だ。しかし、日本とアメリカの関係を考えれば、それを面と向かって批判することは難しい。確かに、あんな歯の浮くようなお追従を大統領に言うなんて、恥ずかしくて見ていられなかったが、少なくともトランプを怒らせず、無理難題も言わせなかったという点では大成功と言わざるをえない。情けないが、これが日本の現実だよ」
旧知の元外交官は苦々しい表情でそう言ったあと、「ただし」と付け加えた。
「今回の首脳会談はまだ第一ラウンドだ。トランプも、戦闘が長引けば秋の中間選挙で与党共和党が苦戦するのは確実だ。欧州各国が距離を置き始めているなかで、トランプにとって日本への期待はさらに高まり、今後もっと踏み込んだ要求をしてくる可能性もある。その時にどう対処するかが最も厳しい選択になるかもしれない」
