安倍氏はトランプ氏とも事前に話した上でイランとの仲介役を果たそうとした。結局イランの強硬な態度を変えることはできなかったが、それだけイランは日本の国益上重要だったと判断していたのだ。安倍氏自身は次のように語っている。

「世界有数の産油国であるイランは、日本にとって重要な石油供給国です。百田尚樹さんのベストセラー『海賊と呼ばれた男』にも描かれているように、日本人は戦後、イランを支配していた英国の反発を押し切って、イランから原油を買い付け、貧窮していた地元の人々を助けたわけです。日イランはそういう良好な関係にあります。世界最大級と言われるイランのアザデガン油田の開発にしても、日本は権益を保持していたのに、米国のイラン制裁強化で撤退を余儀なくされた。そして日本の代わりを中国企業が穴埋めし、開発契約をイランと結んでしまった。日イラン関係を放置しておくのは、あまりにももったいないでしょう」(『安倍晋三回顧録』中央公論新社)

したたかな外交が不可欠

安倍氏の言うように、外交には歴史的な知識や複眼的な思考が必要だ。その場しのぎの対応だけでは、いずれ行き詰る。首脳会談では、憲法9条を盾に一度は自衛隊派遣を断ったが、トランプ氏自身はそんな事は関係ないと思っているようだ。アメリカのメディアに対して、「(憲法の制約でできないことがあると)高市首相が言った事は理解しているが、日本はそれでも何かやってくれると思う」と述べている。

トランプ大統領の二転三転する発言に各国が対応に追われ、金融マーケットはその度に不安定な動きが続く。ホルムズ海峡の事実上の封鎖は、世界経済を揺るがし始めている。現状を見る限り、トランプ大統領に世界に平和と繁栄をもたらす力があるとは到底思えない。このまま戦争が泥沼化すれば、日本も含めて世界中が迷惑することだけは確かだ。

曇天の国会議事堂
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むしろいま必要なことは欧州はじめ価値観を同じくする諸国と協力して国際秩序を取り戻すべきだとトランプ大統領を説得することだ。このままだとアメリカは孤立し、それこそロシアや中国などの台頭を許すだけだという現実を理解させるのである。

トランプ氏との個人的な信頼関係を築いたのであれば、高市首相に求められているのは、そうした長期的な視野に立った「したたかな外交力」ではないだろうか。

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