日本の中学生が受ける性教育は1年間で3時間

一方、日本でも小学校から高校まで、体育科や保健体育科のなかに性教育の授業はあるが、身体の発達、性感染症や性暴力に特化した内容だ。中学生が受ける性教育の学習時間は1年間で3時間にも満たないし、受精は教えているが、性交は教えていないなど、実践的な内容ではない。ここには理由がある。

通称「はどめ規定」と呼ばれるものだ。1998年、文部科学省は「妊娠の過程を取り扱わない」という文言を中学校の保健体育の学習指導要領に盛り込んだ。これ以降、多くの学校が「性交」を教えておらず、多くの教育者や保護者から批判されている。しかし、近年、「はどめ規定」に忖度しない性教育プログラムを導入してきた小中高が増加し、ソーシャルメディアでは性教育者のインフルエンサーも台頭してきた。

また、2020年より、文部科学省は子どもたちが性暴力の被害者・加害者・傍観者にならないために、「生命の安全教育」を全国の学校(幼児・小中高生・大学生)に対して教材を提供している。幼児から小学校高学年には、「生命の大切さ」「水着で隠れるところは自分だけのもの(境界線・プライベートパーツ)」など、それ以上の年齢の子どもにはSNSとの付き合い方やデートDVなども教えている。

このように日本でも性教育は少しずつ発展しているが、先進国の性教育は中学3年間で15時間~30時間と言われているのに、日本は3年間でたったの9時間程度である。。国が教育課程に性教育の授業数を増やさないと、高校受験を控えた中学校がわざわざ性教育のプログラムを導入するだろうか?

日本の性教育に欠けているものとは

もうひとつ懸念がある。性感染症や性暴力から自分を守る知識は非常に重要だが、それだけだと、「セックスやパートナーシップは怖いもの」という価値観を生む可能性がある。特に、世界一とも言われるほどの巨大な性産業を抱え、性が簡単に買える日本において、性的関係やパートナーシップの意味を考えることは非常に重要ではないだろうか――。

岸田政権の「異次元の少子化対策」も子育てや妊活支援だけではなく、子ども、パートナーシップや性をポジティブに捉える性教育を盛り込むべきなのだ。

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