小沢さんだから和食と思っていたら、セッティングしてくれたのは夜景がとても綺麗なフレンチレストラン。「今日はおちさんじゃなくて奥さんが主役だから」というのがその理由でした。この気遣いは本当に嬉しかったですね。
しかも約束の日の前日に福田康夫さんが総理大臣を辞めちゃった。さすがに中止だろうと思っていたら、約束通りやってくださったんです。これにもグッときました。
この例は接待とは少し違いますけど、僕もこうあらねばと思いましたね。相手のことを一生懸命本気で考える。それってお金じゃないですよね。その人をプロデュースする、ということにも通じます。
もう一つ接待で重要なことは、終わったときに「今日は楽しかった」と思ってもらえる能力です。
相手が楽しかったと感じるのは、実はその人自身が気持ちよく喋ったとき。それには聞き上手に徹しているだけではダメです。「あなたの話を本当に聞いていますよ」という信号を送ることがとても大事なんですね。
その信号の送り方は、相手の話がひと区切りしたところで、そのセンテンスにポンとタイトルをつけてあげる。
「それってこういうことですね」
「要するに○○状態ですね」
しかも話の要約ではなく、その人が初めて聞くキーワードでタイトルをつけると、「俺の話を一回咀嚼して、返しているんだな」とわかりますから、相手は話すことがどんどん面白くなっていきます。すると2時間会食しているうち、僕が話した時間が五分しかなくても「いや、おちさんの話は面白いな」ってなるんです。接待のうまい人って、結局はこれですよ。自分が面白い話をするわけじゃない。
ただ、いきなり相手の話にうまいタイトルをつけようとしても無理。何も練習しないでフルマラソンを走るようなものです。日々の自主練しかありません。
毎日、目上の人たちと飯を食う。それを10年続けたら、どんな予算だろうといい接待ができるようになりますよ。気楽だからといって、同僚や部下とばかり食事してちゃいけません。