マウントを取られる側の人間にとっては迷惑なだけ

例えば、次のようなケースです。

あるメーカー会社員の里美さん(仮名)は、とても仕事ができる優秀な女性です。仕事ができる上に他人の面倒見もとてもよく、周りからは常に認められ、上司からも称賛され評価されている人物でした。

しかし里美さんの後輩に梨花さん(仮名)が入社してきてから状況は一変したのです。

梨花さんは仕事を覚えるのが早く、周りにたちまち一目置かれる存在となり、おまけに容姿端麗で男性社員からも大人気となりました。

梨花さんは出身大学も里美さんと同じで、もはやお局様と化した里美さんから見ると、周りからの注目や評価や称賛が一気に奪われた気持ちになってしまったのかもしれません。

里美さんは梨花さんの前でこんなことをつぶやくようになりました。

「え、それくらいも知らないの、私でも知っているのに」
「まあ私の苦労に比べたらまだまだ楽でいいわよ」
「若いっていいよね。若いってだけで失敗しても免罪符になるしね」

仕事中、イラついたようにこちらを見ている女性
写真=iStock.com/hikastock
※写真はイメージです

かなりイライラしています。

このように里美さんは、梨花さんに対してことあるごとにケチをつけては「マウント」を取ってきました。その理由は彼女に対する嫉妬・妬み。そして、自分の劣等感を刺激されたことに対する強い怒りです。

しかし、梨花さんには里美さんの劣等感や妬みや怒りはまったく関係がありません。

このようにして、マウントを取りたがる人はどこにでもいますが、マウントを取られる側の人間にとっては迷惑なだけです。

そしてやっている本人は自分の心の問題には気がつかないため、ますます評価や信用が下がり周りから敬遠されてしまうようになります。

「他人を無価値化する」ことで、恐怖と不安から逃げようとする

このようなマウント癖のある支配的な人の心理について説明します。

彼らはなぜ他人に対してマウントを取りたがるのか。

それは、本当は自分に対して自信がなくて、心の奥底では自分はダメだと思っている可能性があるからです。つまり、深層心理の深いところでは自分のことが好きではない、という自己否定の感覚をどこかに隠し持っていたりするのです。

本当の自分を認めたくない、できないところや弱さやダメなところを否認して、本当の自分を隠したがり、自分は承認され評価されるに値する人物でなければならない、そうでないと恥ずかしいと、プライドが傷つくことを極端に恐れます。

また、そのような自分を誰かに見られて見下されたり、バカにされたりすることを恐れて、「他人を無価値化する」ことで、恐怖と不安から逃げようとするのです。

つまりマウントを取ること自体が不安の表れなのです。

ではマウント癖のある人の特徴を次にいくつか挙げてみます。

・本当は自分に自信がなく裏では自己否定を抱えている
・常に人よりも価値のある自分でなければならない
・頑張ることがやめられない
・他人にどう見られているのかなど、他者評価や承認に非常に敏感
・少しのミスや失敗に過剰に落ち込む
・他人と自分を常に比較する
・勝ち負けにこだわる
・人間関係は上下で判断して態度を決めている
・恥の恐怖を過剰に恐れている
・本当の自分の弱さやできないところや欠点を認められない
・間違いに気づいても謝れない

など、これらのいくつかに該当するようであれば、まずは自己否定の問題を掘り下げて、その問題に向き合うことが重要です。