「被害者ポジション」でマウントを取る人

人が過去の身の上話をするときに、その話をさえぎって自分の不幸話を持ち出す人に出会って困惑した経験はありませんか。

例えば、

「私はあなたよりもひどい目に遭ってきた」
「あなたなんかいいほうよ」
「あなたには家族がいるけど私は離婚してシングルよ」
「小さい頃からいつも私は虐待されてきたサバイバーなのよ」
「あなたなんてまだ旦那がいていいじゃない」

他人の話を遮り奪ってまでして、自分の不幸話をとうとうと語り始めます。

周りは困惑して黙って聞くしかありません。

「自分が世界一不幸な被害者」だと言えば、周りを圧倒できて優位に立つことができるわけですから、私のように不幸な者はいない、と訴え続けます。まさに不幸であることを過剰に強調して訴えることから「不幸マウント」と呼んでいます。

これは、

「私を一番大事に扱ってほしい」
「誰よりも私に関心を持ってほしい」

という自己中心性の表れでもあります。そして、同時に周りから承認と称賛と愛情を求めている証拠です。つまり寂しさや孤独の問題を抱えていることが考えられます。

これは幼児期に両親に愛してもらえず、欲求や甘えを受け止めてもらった経験が少ないか、無視されてきたか、役に立たなければ認めてもらえなかったという、過去の幼児期の傷つきを乗り越えられていない可能性があります。

「私は不幸だ」とことさらに強く訴える理由には、私を大事にして、愛してほしい、受け入れてほしいという幼児的な満たされない欲求や依存心が影響しているのです。

膝を抱えて悲しそうな顔をして座っている少女
写真=iStock.com/anurakpong
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自分の中の愛情欠乏感や寂しさに向き合って癒す

なぜ不幸なのに、それが自慢になるのでしょうか。

それは、誰よりも不幸でいたら周りに注目される、承認される、黙らせることができる、同情と慰めの言葉をもらえる、などの心理的な利得(メリット)がたくさんあるからです。

このような不幸マウントを取る人は、そういう自分にどこか酔いしれている部分があり、周りからの注目や承認や同情や共感を集めることで、一瞬満たされた気分になるので気持ちが楽になれるわけです。

だからこそ「私はいつも不幸/被害者」というポジションを取ろうとします。

そうすることで、「私は自分の人生に責任を取る必要はありません」ということにしたいのです。こういった依存心や敵意が根底にあることが問題です。

これを解決するには、自分の中の愛情欠乏感や寂しさ、空虚感や孤独感に徹底的に向き合って癒すしかありません。