農林中金と共にJA農協も崩壊する
今回の赤字の根源に農家や農協の“脱農業化”がある。
本籍農業のJAを支えるのは農林中金中心の金融業である。信用事業の利益は、農林中金による利益還元のおかげである。しかし、共済事業の自爆営業も、農林中金のマネーゲームも持続可能(サステイナブル)ではない。これらが縮小・消滅していくと、JA農協は倒産・崩壊の危機に直面する。
農政は、農協、農林族議員、農水省の三者による連合体で実施されてきた。私は、『農協の大罪』(宝島社)という著書の中で、これを“農政トライアングル”と呼んだ。これは極めて強力な利益共同体だった。
農協は多数の農民票を取りまとめて農林族議員を当選させ、農林族議員は政治力を使って農水省に高米価や農産物関税の維持、農業予算の獲得を行わせ、農協は減反・高米価等で維持した零細農家の兼業収入を預金として活用することで日本第2位のメガバンクに発展した。
今回の農林中金の赤字は、戦後政治で最大の利益団体となったJA農協の弱体化につながる。政治力が弱まれば、減反政策のような「補助金」と「高いコメ代」という二重負担を国民に強いる政策についても見直されていくだろう。非効率な零細農家は離農し、その農地は専業農家に集約されて生産性が向上する。
本来農業振興のための組織だったJA農協の弱体化が、農業の再生につながるとは皮肉な話である。