お酒が好きじゃない人のお酒の飲み方を調べる

RTD部の高橋直子氏。

山田の部下で、プロジェクトの担当者・高橋直子はこう話す。

「調査結果を見ると、びっくりすることばかりでした。若い世代は缶チューハイ(レギュラー缶)を1本飲む時間が、50分もかかるというんですね。テレビを見ながら、パソコンなどをしながら、小1時間かけてちびちび飲むわけです。それじゃ炭酸が抜けちゃうと思うわけですけど、むしろ今の若い人は強い炭酸が苦手なようで、ちょっと気が抜けたくらいが飲みやすくていいんだ、と」

若い高橋ですら、驚いたのである。世代がさらに離れ、強い酒が好きな“正統派の呑み助”である山田は、当初、この結果を聞いて、驚きを通り越してあきれたという。しかし、一拍の間を置いて山田は、何度もうなずいた。

「今回の調査はよかった。消費者、お客さんの気持ちが体感できるレベルまで調査できました。高橋たちがお客さんに聞いたリサーチやグループインタビューを横で聞いていると、20代が感じるイメージは、自分たち50代の感覚とは違うのだと自然にわかった。この瞬間に、まったく新しく、素晴らしい商品ができると確信しました」

消費者の気持ちが体感できるレベル。これが重要なキーワードだ。

5年は続いている山田の日課がある。通勤の途中に東京都下の量販店に出向くこと。業者として振る舞うのではなく、客のフリをしてカゴをぶら下げ酒売り場に立ち、消費者の行動を観察する。