俗世間を離れて暮らす「仙人」のよう
低アルコール飲料「ほろよい」が売れている。発売は2009年3月。10年の販売数量は前年比2倍超の613万ケースで、11年も昨年比9%増を見込んでいる。(※雑誌掲載当時)
チューハイ、カクテル、ハイボールを合わせた「RTD」(Ready to drink=手軽にすぐ飲める)市場。そのトップ商品は「氷結」(キリン)で、圧倒的な強さを誇っていた。だが、サントリーの酒類は「ほろよい」のほかにも「-196℃」「カロリ。」「カクテルカロリ。」「角ハイボール」などが好調で、トータルではキリンを大逆転、9年ぶりにシェア1位を獲得した。
好調を牽引しているのは、山田眞二・RTD部長だ。
1980年に入社して以来、宣伝部長、事業部長を歴任し、商品開発数は、「会社でたぶん一番」(山田談)というヒット商品請負人である。
とはいっても、押し出しが強くてモーレツなカリスマ性に溢れたリーダーシップ発揮型、という感じは微塵もない。穏やかな風貌で立ち居振る舞いはソフト。部下や同僚が接するときのイメージは、飄々としていて「俗世間を離れて暮らす仙人のような雰囲気」(サントリー社員)だという。そんな山田が指揮した「ほろよい」の商品開発の過程は、さまざまな意味でサントリーの常識を逸脱していた。
商品コンセプトは20代前半の若い世代に受け入れられるお酒。開発の中心となったのは20~30代の若い女性部員たちだ。「消費者と開発者の年齢が近ければ近いほうが、消費者の購買行動に感情移入できる」という考えが山田にあったからである。