相続した3500万円が減っていくのを見ていられなかった60歳長男

そのような提案をした筆者ですが、同時にさまざまな懸念が頭の中に浮かび上がりました。

まず、物件を購入するにはそれなりのお金がかかります。購入後、場合によってはリフォームが必要になることもあるでしょう。入居者を募集している間は家賃収入が発生しないといった空室リスクもあります。

さらに新たな出費についても考えなければなりません。物件を購入することで固定資産税を支払うことになります。家賃の回収や住人との折衝は不動産業者にお願いすることになるので、不動産管理手数料も発生します。家賃収入を得ることで国民健康保険料は増額し、所得税と住民税もかかるようになります。

ユニークな赤い家
写真=iStock.com/JuSun
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家電の買い替えや急な入院費などの一時的な支出に備え、ある程度の貯蓄も確保しておきたいところです。内山さんは自宅に住み続けることを希望しているので、将来どこかの時点で最低限のリフォームも必要になることでしょう。物件を購入しても、それらの費用は確保できるのか。

「果たして内山さんの生活を担保(自宅を売却せずに、なおかつ賃料収入を得られる)できるような物件は見つかるのだろうか?」

筆者一人では判断がつかなかったので、次のような提案もしてみました。

「私の知り合いに、ひきこもりの方や働くことが難しい方に理解のある不動産業者がいます。内山さんの希望がどこまで叶えられるか分かりませんが、条件に合うような物件がないか探してもらうよう頼んでみます。次回の面談ではその不動産業者にも同席してもらい、物件の話をしてもらうのはどうでしょうか?」
「はい、構いません。ぜひお願いいたします」

そこまで話したところで、初回の面談は終了となりました。

内山さんとの面談後、筆者はいつも頼りにしている不動産業者のT氏に事情を説明。内山さんのニーズに合うような物件を探してもらうようお願いをしました。

するとT氏は「事情はわかりました。できるだけニーズに合うような物件を探しておきます。物件が見つかったらすぐに連絡をしますね」と約束をしてくれました。

数日後、T氏からよさそうな物件が見つかったとの報告があり、内山さんと2回目の面談を実施することになりました。