気がついたらひきこもり状態…父親他界で「心が解放された気がした」

20代の頃の内山さんは不定期にコンビニや居酒屋でアルバイトをしていましたが、依然としてやりたいことは見つかりませんでした。次第に気力や体力がなくなっていき、30代に入るとアルバイトを一切しなくなってしまったそうです。

当時、父親は会社員として朝早くから夜遅くまで働いていたので、家の中で顔を合わせる機会はそう多くなく、内山さんは家の中を自由に動くことができました。

しかし父親が定年退職を迎えると、父親も家の中にいる時間が増えたため、内山さんは父親を避けるように一日のほとんどを自室でラジオを聴きながら過ごすようになったそうです。

「自分でもよく分からないまま、気がついたらひきこもりのような生活になっていました」と内山さんは当時を振り返りました。

父親と理解し合えないままひきこもり生活を続けていた内山さんは、13年前に父親を病気で亡くしました。

父親の死後、心配した母親が市役所の国民年金課で相談。市役所の窓口で免除の説明を受けたのち、2年1カ月前からさかのぼって申請免除の手続きをしました。そこからは全額免除となり(本人と配偶者と世帯主の所得を合計した金額が去年1年間で67万円以下なら全額免除を受けることが可能)、やっと未納状態から抜け出すことになりました。

年金手帳
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

父親が亡くなった後、内山さんは不謹慎だと思いつつ「やっと心が解放された気がした」と感じたそうです。家の中で自由に活動できるようになったためか、内山さんは徐々に母親の家事を手伝うようにもなりました。そのおかげで一通りの家事はできるようになったため、母親亡き後も何とか生活を維持することはできているそうです。

そこまでお話を伺った筆者は、内山さんのお金の見通しを立ててみることにしました。

まずは公的年金の収入を確認するところから始めます。聞き取った情報から、内山さんの年金加入状況はおおむね次のようになります。

20歳から45歳まで 未納
45歳から60歳現在まで 全額免除

この情報をもとに、筆者は内山さんの65歳からの老齢基礎年金および年金生活者支援給付金を概算してみました。

老齢基礎年金 月額 1万2750円
老齢年金生活者支援給付金 月額 4250円
合計 月額1万7000円
※いずれも2024年度の金額

さらに男性の平均余命を参考にし、内山さんが82歳まで生存した場合、どのくらい貯蓄を取り崩すことになるのか? 大まかな見通しも立ててみました。

60歳から65歳まで 月額 10万4000円の赤字
65歳から82歳まで 月額 8万7000円の赤字
赤字の合計は10万4000円×12カ月×5年+8万7000円×12カ月×17年=約2400万円。

余命人生を終えるまで残り22年間で計2400万円の赤字が出る。この他に家電の買い替えや急な医療費などの一時的な支出として150万円程度は確保しておきたいところです。

さらに、自宅に住み続けるとすると、将来どこかの時点でリフォームもすることになるでしょう。それらをふまえても、貯蓄の取り崩しは3000万円程度におさまりそうです。